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アミューズメント業界のキャッシュレス動向

2019年は日本のキャッシュレス化の節目となる年であり、特に消費税増税とQRコード決済が大きな論点になることは先日の記事でも述べられている。今回は1月25~27日に幕張メッセに開催された「ジャパンアミューズメントエキスポ2019」の内容を踏まえ、アミューズメント施設でのキャッシュレス動向について報告する。

本イベントは、ゲームセンターを中心としたアミューズメント施設に設置するゲームマシンや遊具に関連する企業が出展し、最新のコンテンツや機器をお披露目するこので、年に1回開催されている。開催回数も50回を超え、歴史あるイベントでもある。

少し古くはなるが、アミューズメント施設へ交通系電子マネーに加え独自のプリペイド型決済手段が導入されていることは以前の報告の通り。

今回の展示で目立ったのは以下の2点である。

  1. QRコード決済の導入
  2. チャージ不要の決済手段導入

QRコード決済の導入

多くの事業者がQRコード決済導入をアピールしている点が印象に残った。

現状、交通系電子マネーが利用可能なアミューズメント機器の多くは、機器本体に決済端末を組み込んではおらず、外付けの端末を追加実装している。その外付け端末に機能追加する形式でQRコード決済を可能にしているようだ。

QRコード決済をする場合には、端末の液晶画面で利用したい決済手段を選択(タッチ)し、その後表示されるQRコードを各アプリで読み取れば良い。

まずは、Alipay・Wechatpayから導入し、LinePay・PayPay・楽天Pay・d払いといった国内QRコード決済手段も順次導入していくとのこと。

これらのQRコード決済は、セガやコナミのゲーム機を中心に利用できそうだ。

また、QRコード決済のみを導入したい事業者に向けた仕組みを旭精工加賀電子が出展していた。これらは端末価格が従来のものよりある程度安価のようで、クレーンゲームがメインターゲットとのこと。

いくつかの事業者にヒアリングしてみたが、アミューズメント業界においてQRコード決済ニーズが急速に高まっているかと言うとそうでもないようだ。しかしながら、電子マネー決済導入後の継続的な利用率の高まりや外国人訪問客の増加に加え、国のキャッシュレス推進も追い風となり、キャッシュレス比率は高まっていくのではないかという意見を多く聞けた。またQRコード決済に関しては決済端末の費用負荷が比較的低く、またQRコード決済特有の「決済までの時間(手間)」というデメリットも、決済に関するスピードがそこまで重視されないアミューズメント施設に適しているという点もあったかもしれない。

チャージ不要の決済手段導入

セガのブースでは、クレジットカードを利用した決済手段「AimePay」が新たに紹介されていた。

プレイデータを管理するカード「Aime」にクレジットカード情報を紐づけることで、Aimeカードそのもので決済を行うようだ。アミューズメント施設を訪れた際にクレジットカードを持っていなくても決済可能ということになる。

従来アミューズメント施設に導入されている、交通系電子マネーや独自電子マネーはプリペイド型のため、「チャージの手間が面倒」・「高額決済が発生する可能性のある一部カードゲームに不向き」といった利用者観点での課題があったが、クレジットカードであればこれらは解決される。加えて、このAimePayはすでにアミューズメント機器に内蔵されているAimeリーダーを利用できるため、施設事業者からみると新たなインフラ投資費用が不要となる。AimePayを利用するためにはクレジットカードを保有、紐づけする必要があるが、一定の利用頻度がある利用者にはメリットの多いサービスとなりえるのではないだろうか。

所感と展望

会場では、VRを利用した体感型ゲームも多く出展されており、身近にあるゲームセンターで新しい体験ができるようになっている。コンテンツの進化は継続されており、とても魅力的というのが率直な感想だ。

エンターテインメントの世界において、コンテンツの中身そのものは当然ながら重要だが、既存顧客の他コンテンツへの流出阻止や新たな顧客獲得を考えるのであれば、ユーザーがコンテンツを体験する導線全体の設計も今後は重要になってくると思われる。

従来の「1プレイ100円」というモデルが、今後変わっていく可能性もある。プレイ頻度や来店頻度に合わせた価格設定、フリープレイ、サブスクリプション・・・等、様々な課金モデルと電子決済は相性が良い。

今後、アミューズメント業界でもキャッシュレス導入が拡大していくのは間違いなく、近いうちに我々があっと驚く新しい決済方法が生み出されることを期待したい。

なお、来場者数はビジネス・一般合わせて84,214人となり昨年から16%程度増えており、注目の高さを伺えるイベントとなった。

あくまで個人的な印象であるが、ビジネスデーにおいては海外、特にアジアからの来場者が増えていると感じた。

コンテンツビジネスでは中国の台頭が目覚ましいが、日本にかかる期待も引き続き高いということだろう。