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キャッシュレス化促進のための「サービスと決済の融合」のアプローチ

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2015年6月5日(金)、日本ユニシス株式会社の総合イベント「BITS2015」にて、「キャッシュレス社会が生み出すライフイノベーション」と題したパネルディスカッションが開催され、日本ユニシス株式会社富田氏(決済イノベーションプロジェクト長)、大日本印刷株式会社米田氏(情報ソリューション事業部デジタルイノベーション本部副本部長)、株式会社カードウェーブ岩崎氏(編集長)といった有識者とともに、当社代表取締役である丸山も登壇いたしました。

本稿は当日のパネルディスカッションを下敷きに、今後のキャッシュレス化の拡大における「サービスと決済の融合」というアプローチの重要性について述べたいと思います。

参考リンク

2020年東京オリンピック/パラリンピック開催決定を受け、2014年からは政府・業界が連携したキャッシュレス化推進の機運が生まれています。また、近年は従来の決済事業者以外の新規参入や新サービス投入が相次いでおり注目を集めています。例えば国際ブランドプリペイドカードや同デビットカードの発行。巨大な会員基盤を持つ携帯キャリア各社によるプリペイドカード/クレジットカード発行や、地方銀行などによる地域商圏活性化の一環としてのデビットカード発行。また、LINEなどソーシャル系サービス事業者の決済サービスや、中小・個人事業者向けのスマホ決済端末の普及などもあり、日本におけるキャッシュレス決済シーンは拡大を続ける見込みです。

しかし日本の電子決済比率は世界的に見て低水準。多くの先進国が30%を超える電子決済比率を実現している中、日本はまだ15%に留まっています。これはなぜでしょうか。カードが普及していないわけでもなく、決済可能場所が極端に少ないわけでもありません。重要なのは、「カードを持っていても使わない」、「カードが使えるのに使えない」という消費者の行動の変革にあると言えるでしょう。

カード利用の訴求と言うと、ポイント施策による顧客の誘導が強調されます。例えば楽天カードの著しい伸長などはポイントによるカード利用促進の一大成功事例と言えるように、ポイントの重要性は万人が認めるところです。しかし「ポイントがお得だからカード決済」という考え方がすでにかなり浸透している中でもまだカードを使わない消費者対して、決済サービス事業者はどのようにアプローチすべきでしょうか。

「ポイントがお得だからカード決済」という導線の特徴は、消費者が意識的にカード決済を利用しようと決心することが必要という点です。それでは逆に、消費者が意識しなくてもよいキャッシュレス決済とは何でしょうか。それは、消費者の行動導線に組み込まれたサービスの中に組み込まれた決済機能と言えます。消費者が自ら進んで利用するような利便性の高いサービスに決済が組み込まれている場合、その決済機能は、わざわざ意識されることなく自然なかたちで消費者に利用されることになります。これは、タクシー配車アプリで配車依頼すると自動的にカード決済が行われる、という例や、CLOのように、クーポンを利用すると必然的にカード決済を利用する、といった形態がすでに実現されています。

このような「サービスと決済の融合」の実現において、やはり有望なのは、消費者が肌身離さず持ち歩いているスマホを中心とする領域と思われます。サービスと決済の融合による、利便性をさらに高めたサービスの普及と、その効果としてのキャッシュレス化のさらなる進展。ここが、今後のイノベーション領域となってゆくと当社では考えています。