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消費増税とQRコード決済の急拡大

10月の消費増税は、それに連動して始動した「キャッシュレス・消費者還元事業」によって、キャッシュレス決済利用促進の一大イベントとなりました。増税をはさんだ数ヶ月間でキャッシュレス決済サービスのユーザーは大幅に増え、利用回数も増大しています。当社の独自調査の結果を元に解説します。

調査結果のポイント:

  1. 2019年10月時点のQRコード決済アプリの利用率は35.7%、3月調査の11.6%から3倍以上に拡大
  2. 個別のQRコード決済アプリではPayPayが利用率トップ、2位はLINE Pay、3位は楽天ペイ、4位はd払い、5位はメルペイ
  3. 全サービスの「新規利用率」(2019年7月以降に利用を開始した人の割合)の首位はPayPay(14.6%)、2位は楽天カード(7.3%)、3位は楽天ペイ(5.1%)、4位はLINE Pay(4.4%)、5位はメルペイ(4.0%)
  4. カテゴリー別の新規利用率のトップはQRコード決済アプリ(24.2%)、2位はクレジットカード(17.9%)、3位は電子マネー(10.5%)
  5. 調査時点でのQRコード決済アプリ利用者の68%は7月以降に利用開始した新規利用者
  6. 今年10月とそれ以前でのお金の支払方法の変化についての設問では、45%が「キャッシュレス決済を利用する回数が増えた」と回答

調査概要

2015年から毎年3月に実施している「インフキュリオン決済動向調査」と同じ様式で実施しました。全国の16才から69才の男女を対象とするインターネット調査です。対象者数は2万人です。

実施期間は2019年10月18日~21日です。

同様の形式で実施した過去の「決済動向調査」については「https://insight.infcurion.com/tag/調査結果発表/」でご確認いただけます。

3月から10月でQRコード決済アプリ利用率が急拡大

まず最初に、カード決済とQRコード決済アプリの利用率です。これは、利用している決済カードとQRコード決済アプリを全て答えてもらう質問の回答データから算出したものです。

 

図1:2019年3月から10月で、QRコード決済アプリの利用率は3倍以上に拡大

QRコード決済アプリの利用率は11.6%から35.7%へと3倍以上に拡大しました。クレジットカードの利用率に変化が無いことを考えるとこれは驚異的なユーザー獲得力といえます。

「ブランドデビット」はVisa・JCBのロゴの付いたデビットカードのこと、「ブランドプリペイド」はVisa・MasterCard・JCBのロゴのあるプリペイドカードのことです。

電子マネーは交通系ICカードや流通系電子マネーなど、FeliCaベースの電子マネーを対象としています。

3月時点でQRコード決済アプリはブランドプリペイドを超えブランドデビットに迫る利用率でした。消費増税をはさんだ今回調査では既にこれらを抜き去り、大きく躍進しています。この勢いを維持し、電子マネーを抜いて決済サービス2位に躍り出る日が来るのか、今後の動きに注目です。

3月調査についてはこちら:

QRコード決済アプリ1位はPayPay

今回調査では2万人のうち35.7%にあたる7133人が、いずれかのQRコード決済アプリを1つ以上利用していると回答しました。図2に、Qrコード決済の各アプリの利用率を示します。

図2:QRコード決済アプリではPayPayがダントツ1位

1位はPayPay(63.8%)、2位の倍以上の利用率となりました。

2位のLINE Pay(29.6%)、3位の楽天ペイ(28.8%)が2番手集団を形成しています。3月調査から順位が逆転しています。

4位のd払い(19.7%)、5位のメルペイ(18.5%)が第3集団です。後発のメルペイが急速に追い上げてきています。

全サービスにおける新規利用率はPayPayがトップ

今回調査では、「2019年7月以降に利用を始めたサービス」を回答してもらっています。消費増税直前の期間での新規ユーザー獲得の状況を分析することが可能です。

図3には、「2019年7月以降に利用を始めた」と回答した人の割合を「新規利用率」とし、新規利用率の上位のサービスを示しています。

図3:新規利用率トップはPayPay

新規利用率トップはPayPay(14.6%)、2位はクレジットカードイシュアの楽天カード(7.3%)です。

3位から5位はQRコード決済アプリ勢が占めています。楽天ペイ(6.1%)、LINE Pay(4.4%)、メルペイ(4.0%)でした。

6位には交通系電子マネー(Suica、PASMO、Kitaca、manaca、TOICA、ICOCA、はやかけん、nimoca、SUGOCA等)が入りました。

全体的に、QRコード決済アプリの新規ユーザー獲得力が目立つ結果となりました。

また、楽天グループからは、楽天カード、楽天ペイ、楽天Edyの3サービスが上位に入っています。「楽天経済圏」は拡大を継続していることがわかります。

各カテゴリーの新規利用率ではQRコード決済アプリがトップ

次は、個別サービスではなく、決済プロダクトのカテゴリーごとの新規利用率です。

図4:QRコード決済アプリが新規獲得トップ

設問では個別サービスごとに新規利用かどうかを聞いていますので、カテゴリーの新規利用率は「当該カテゴリーのサービスのうち、7月以降に利用開始したものが1つ以上あった人」の割合となります。クレジットカードの新規利用率は、7月以降に新しく利用を始めたカードが1枚以上あった人の割合です。クレジットカードを人生で初めて利用開始した人の割合ではないことに注意してください。

カテゴリーとして、QRコード決済アプリが新規獲得トップで、約4人に1人がQRコード決済アプリの利用を開始しました。

7月以降に新しくクレジットカード利用を開始した人は約18%です。

QRコード決済アプリ利用者の大多数は新規利用者

同じデータから、今度は各カテゴリーの利用者数に占める新規利用者の割合を算出したものが図5です。

図5:QRコード決済アプリ利用者の大多数は新規利用者

なんと、10月調査時点のQRコード決済アプリ利用者のうち、68%は7月以降に利用開始していることがわかりました。消費増税が近づく中で驚異的なスピードで新規ユーザー獲得してきたことがわかります。

他のカテゴリーでは新規利用者の比率は2割から3割程度です。QRコード決済アプリの特殊性が際立っています。

消費増税でキャッシュレス決済利用は増大

最後に、消費者個人のキャッシュレス決済利用動向について調査しました。

「今年の10月とそれ以前でのお金の支払方法の変化」について尋ねた結果が図6です。

図6:消費増税でのキャッシュレス決済利用増大

キャッシュレス決済を利用する回数が「かなり増えた」と「まあまあ増えた」をあわせると、45%がキャッシュレス決済利用回数を増やしていることがわかりました。

キャッシュレス決済の普及に弾み

今回調査では、3月から10月の7ヶ月間でQRコード決済アプリが新規利用者を多数獲得し、消費者サイドもキャッシュレス決済利用を増やしていることがわかりました。

キャッシュレス決済の普及推進は政府と業界の共通課題として従来から取り組みがされてきましたが、消費増税前の約半年間で大きな進歩がありました。

※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。