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Embedded Finance海外事例 〜急成長を続ける先駆者Green Dot〜

世界最大規模の小売店Walmartが金融サービスを生活者に提供していることをご存知でしょうか。実は、WalmartだけでなくAppleやUberなど様々な業種の大手企業が、自社サービスに金融サービスを組み込んで提供するビジネスモデルである「Embedded Finance」(エンベデッド金融)に取り組んでおり、その潮流は日本を含む世界各国へと広がっています。

しかし金融サービスは法制度上、銀行業や貸金業、金融商品取引業等の専門ライセンスをもつ事業者のみに許されているもので、それは日本でも諸外国でも変わりありません。

実は、Embedded Financeに取り組む非金融事業者の多くは、銀行などの提携金融機関が提供するAPIを用いて、自社サービスへの金融機能の組み込みを実現しているのです。

金融機関が、提携企業にAPI経由で機能提供するビジネスモデルは「Banking-as-a-Service (BaaS)」と呼ばれています。Embedded Financeの多くの事例はBaaSによって実現されています。

本記事ではEmbedded Financeの潮流と、その裏側に存在する企業の活動について紹介します。

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Embedded Financeのプレイヤー

世界的な盛り上がりを見せているEmbedded Financeですが、そのプレイヤーは少なくとも3種類に分類できます。

(1) 金融機能を提供する、金融機関
(2)エンドユーザーにEmbedded Finance型のサービスを提供する、ユーザー企業
(3)両者の間を仲介するEnabler(イネーブラー)企業

(1)の例としては米Goldman Sachsや米BBVAのような大銀行、英Starling Bankのようなチャンレンジャーバンクがあります。

(2)は冒頭で挙げたようなWalmartやApple、Uberがありますが、中国のAlibabaやTencentなど圧倒的にシェアの高いプレイヤーにおいてもEmbedded Finance型の金融サービスの提供が事業の大きな柱となっています。

(3)の役割はSynapseMarqetaなどのFintech企業も担っています。

国内においては、たとえば住信SBIネット銀行が、「NEOBANK」というブランドでJALやPayPay、マネーフォワード、ヤマダホールディングス(ヤマダ電機、ヤマダホームズ等)などのユーザー企業に、決済、預金、融資などといった機能を提供し始めています。

また、「DX via Fintech」を掲げBaaSプラットフォーム事業を展開している私たちインフキュリオンも、スマホ決済カード発行を支えるソリューション提供を通して、日本におけるEmbedded Financeの流れをリードしていると自負しています。

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超大手のEmbedded Financeを支えるGreen Dot

冒頭でも紹介しましたが、世界的有名企業であるApple、Uber、WalmartもEmbedded Financeに注力しています。そして驚いたことに、この3社はどれも同じ金融機関から金融サービスの提供を受けています。その金融機関とはGreen Dotというカリフォルニア州に拠点をおく企業。同社は“to provide a full range of affordable and accessible financial services to the masses.(誰もが利用できる金融サービスを提供すること)”をミッションとしています。ここからは、Green DotのEmbedded Finance事例を紹介します。

Green Dotのサイト:https://www.greendot.com/

元々Green Dotは小売店で購入・チャージ可能なプリペイドカードサービスの提供をしていました。買収による銀行業の取得を経て、現在では銀行以上ともいえるサービスを提供しています。例えば、同社の提供するすべてのプリペイドカードには次の機能が搭載されています。

    • 給与の受け取り
    • ATMでの入出金
    • 銀行振り込み
    • Visa加盟店での決済
    • モバイルアプリでの残高確認
    • 個人間送金
    • カードロックなどのサービス
    • ショッピング保険
    • 残高超過支払いに対する借入(上限$200まで)での決済サービス

給与の受取とATMでの入出金という銀行口座さながらの機能だけでなく、決済や個人間送金、ショッピング保険まで展開しているのは驚きです。

さらに、残高に対して最大$10,000で2%の利子がつくものや、入出金手数料が無料になるものもあります。しかし、カードの残高上限は$2,500までという制約があり、残高には有効期限が存在するという点で、銀行口座にはない制約となっています。

そんなGreen Dotの売上は、IR資料によるとFY21 1Qで総売上 207億ドル(toC 102億ドル/toB 105億ドル ※)、FY20 1Qで総売上 143億ドル(toC 76億ドル/ toB 67億ドル)と急速に成長し、直近5年で年間約14〜15%のペースで売り上げが拡大しています。

※「to C」とは直接生活者に提供している金融サービス。「to B」はEmbedded Financeを中心に法人に提供している金融サービス。

Green Dotのユーザー事例

ここでは、Green Dotの展開するEmbedded Financeの例として2つの企業との取り組みを紹介します。

「Walmart Money Card」

Walmart独自の券面デザインのVisaプリペイドカードです。Green Dotのサポートのもと、カード発行、店舗でのカード販売、顧客サポート等の業務を行っています。Walmart以外のVisa加盟店での決済利用も可能です。

Walmart Money Card: https://www.walmartmoneycard.com/

カード機能は上で述べたGreen Dotのプリペイドカードの基本機能だけでなく、独自のキャッシュバックや家族カードさらに家計簿サービスも提供しています。家族全員がWalmart Money Cardで決済利用をすることを見越して、このようなサービスを提供しているのでしょう。

提携金融機関から調達した金融サービスを自社サービスに組み込むことで付加価値を高める、まさにEmbedded Financeの典型ともいえる事例です。

Burger Kingの系列店(給与支払い)

ハンバーガーチェーンのBurger Kingの米国南東部におけるフランチャイズチェーンであるNearly Famous社は、給与支払いにおいてGreen Dotのサービスを活用しています。まさに、日本で昨今話題に上がっている「給与のデジタルマネー払い」です。

アメリカでは銀行口座を持たない、または持てない人が一定数います。そのような従業員に対する給与支払いとして、これまでは現金の代わりに小切手を支給していました。しかし、小切手の支給には各店舗への配送コストをはじめとする多大な手間とコストが発生してしまいます。

そんな課題に対してGreen Dot(正しくは子会社のGreen Dot Technology)では、「rapid! Disbursements」という給与支給のサービスを提供しています。銀行口座振込だけでなく、ユーザー企業が発行する様々なプリペイドカード、受け取り用アカウントコードを利用した小売店の店頭レジ、ATMなどでも給与受け取りを可能にするもので、これらもすべてEmbedded Financeとして提供されています。

更に「rapid! Disbursement」は従業員の要求に応じた給与前払いにも対応しており、これは従業員にとって非常にありがたいサービスになっていることが想像できます。従業員の利便性を高めることは求職者の増加や定着にもつながっていくため、こうしたペイロールサービスは、飲食チェーンなどを中心に人材確保の打ち手として積極的に導入が進められています。

国内ではあまり知られていない米国Embedded Finance界の巨人・Green Dot。国内の今後のEmbedded Financeの潮流においても、参考になる事業だと考えています。