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日本のキャッシュレス化の推進力の一つとなったコード決済アプリ。事前入金した残高を決済原資とするプリペイド型のサービスが広く普及している印象ですが、実際はどうでしょうか。決済動向2023年上期調査では、コード決済アプリへのチャージ行動を理解するための設問をいくつか用意してみました。
もっとも多いのはアプリ残高の利用
まずは、コード決済の支払い原資について。アプリ残高、登録しているクレジットカード、銀行口座やデビットカードといった選択肢を提示して、利用しているものをすべて回答してもらった結果が図1です。
最も利用者が多いのはアプリ残高(65%)で、登録しているクレジットカード(39%)が続きます。やはりプリペイド型を利用する人が最も多いことが確認できました。
チャージ手段はATM・銀行口座・カードが同率
それでは、アプリ残高へのチャージ(入金)方法で一番利用されているものは何でしょうか。前問で「アプリ残高」を選択した360人を対象に、最も利用するチャージ方法ひとつを回答してもらった結果が図2です。
なんと、三つの手法が同率首位となりました。
- 「ATMからチャージ」
- 「アプリに登録した銀行口座」
- 「アプリに登録したクレジットカード/プリペイドカード」
の三つです。この結果が示唆するのは、コード決済利用を支える銀行インフラの重要性です。ATMからのチャージや銀行口座からのチャージは、ATMや銀行口座という銀行業界が用意したインフラあってこそ実現できています。コード決済アプリの利用導線の重要な部分は、実は銀行業界が担っていることになります。
チャージ単価は5,000~10,000円がボリュームゾーン
上記の三つのチャージ方法を利用する際のチャージ単価を聴取した結果が図3です。
「5,000円くらい」と「1万円くらい」が同率首位となっています。過去に電子マネーへのチャージ行動を調査した際には3,000円程度が最も多かったのですが、コード決済アプリへのチャージ単価はもっと大きいことが分かりました。
これには、コード決済アプリの利用がさまざまな業種に広がっていることが関係しているようです。
プリペイド型サービスの多くは、いったんチャージしてしまうと出金できないという「前払式支払手段」です。チャージした資金がロックされてしまうので、ユーザーとしてはプリペイド型サービスへのチャージは必要最小限にしたいという心理が働きます。しかし、残高が少なければ、高額な買い物での利用を躊躇してしまいます。残高不足の心配が利用のハードルとなるからです。電子マネーやブランドプリペイドではこうした心理が強く働くものと思われます。
しかしコード決済はさまざまな業種での利用が広がっているため、「チャージしたお金はどこかで使うだろう」という心理が働きやすくなっています。また、公共料金の支払いやユーザー間送金での利用も活発です。つまり、入ったお金の出口が豊富なのです。そうするとユーザーは、安心して多額の資金をチャージするようになります。コード決済へのチャージ単価が高めなのにはこうした心理があるように思われます。
アプリへのチャージに関する態度
プリペイド型サービスを利用するにあたっては、いちいちチャージするのが面倒なものです。そこで今回は、コード決済アプリ利用者を対象に、アプリへのチャージに関する態度を聴取してみました。図4にその結果を示します。
「自分の好きな時にチャージできるのは便利」(33%)、「アプリ操作でチャージできるのは便利」(25%)がトップにきている通り、アプリ操作によるチャージへの肯定的な意見が上位となりました。
チャージの煩雑さがなければ、ユーザーは自分の必要なときに必要な分だけチャージすることができます。「こまめにチャージして使いすぎないようにしている」(20%)というのは貴重な意見です。
チャージが面倒であるとか、もっとチャージ手段を増やしてほしいといった意見は少数でした。ユーザーはおおむね、現状のチャージ手段に満足しているといえます。
オートチャージの利用状況
プリペイド型サービスにおいて、そもそもチャージという行為をなくしてしまえる機能がオートチャージです。コード決済アプリにおいても、PayPay、LINEペイ、au Pay、d払いといった大手サービスでも利用可能となっています。
オートチャージ機能は電子マネーにもありますが、その利用は一部のヘビーユーザーのみにとどまっています。それでは、コード決済アプリにおけるオートチャージ機能の利用はどれほど普及しているのでしょうか。
図5は、上記の大手サービスの利用者510人を対象に、オートチャージ機能の利用状況を聴取した結果です。オートチャージ利用は12%と、割合としてはかなり小さいことが分かりました。
そして最も多かったのが「知っているが、利用したくないので利用していない」(53%)との回答。コード決済においても、オートチャージの認知は浸透しているが、多くのユーザーはわざわざ利用するまでもないと考えているようです。