当社オリジナルの「決済動向2022年4月調査」を紹介する記事の第4弾。日本の消費者を「現金派」と「キャッシュレス派」に分類したところ、キャッシュレス派が61%と多数派であることがわかりました。2019年の調査では48%とまだ少数派でしたが、コロナ禍を挟んで「現金派」が減少し「キャッシュレス派」が増大しました。
この記事は『CardWave』341号(2022年5・6月号)に掲載された「QRコード決済が電子マネーを超えた日 消費者調査に見る決済市場の構造変化」を抜粋し一部の見出しや改行を改変したものです。
「決済動向2022年4月調査」の主要な結果は当社プレスリリースでも紹介しています:
「QRコード決済の利用率が57%となり、FeliCa型電子マネーを初めて上回る結果に BNPLは、若い女性を中心に躍進し、11%の利用率でブランドプリペイドを凌ぐ勢い」、株式会社インフキュリオン プレスリリース、2022年5月25日
多数派となったキャッシュレス消費者
かつて現金社会と言われていた日本だが、QRコード決済アプリの登場とその急拡大を経て、日本の消費者のキャッシュレス決済利用は飛躍的に増大した。そこで今回調査では、日本の消費者を「現金派」と「キャッシュレス派」に分け、それぞれの割合を算出できるような設計を行った。その結果、かつて多数派だった「現金派」は既に少数派に転落しており、日本の消費者の6割はキャッシュレス派となっていることがわかった。
図6に今回の分析手法を示す。設問では、回答者に、過去1年で利用した回数がもっとも多い決済方法を、現金・カード・スマートフォンの三つから選んでもらう。現金を選択した回答者は「現金派」、カードまたはスマートフォンを選択した消
費者は「キャッシュレス派」に分類する。「キャッシュレス派」はさらに「カード族」と「モバイル族」に細分化することができる。
結果を図7に示す。対象者2万人のうち「現金派」は39%で、少数派であることがわかった。さらに、「キャッシュレス派」を構成する「カード族」と「モバイル族」はそれぞれ36%と25%であることがわかった。もし国際ブランドカードや
FeliCa型電子マネーなどの「広義のカード決済」だけしかなかったとしたら、「現金派」のほうが多数派だったかもしれない。QRコード決済やコンタクトレス決済を含む「広義のモバイル決済」を多く利用する層が全体の25%にまで拡大したことが、日本の消費者のキャッシュレス化に大きく貢献したことがわかる。
男女でみると、男性のほうが女性よりもキャッシュレス度が高い。特に、男性に占める「モバイル族」の割合は女性における「モバイル族」よりも顕著に高い。
年齢階層で見ると、面白いことが分かる。年齢とともに「現金派」は減少してゆき、「カード族」が増加していくのだ。「広義のカード決済」だけでは若年層のキャッシュレス化の度合いが小さいままだが、ここで「広義のモバイル決済」の貢献が生きる。20代・30代・40代で3 割弱を占める「モバイル族」の存在が、キャッシュレス派の勢力を大きく押し上げているのである。また、カード決済が浸透していない10代においては「広義のモバイル決済」が重要な位置を占めている。
2022年のこのような状況は、数年前にはまだ想像することも難しかった。決済動向2019年3月調査で類似の形式での設問を行っていたが、その時は「現金派」が52%と多数を占めていたのである(図8)。そこから3年間で「現金派」は急減
し、替わって「キャッシュレス派」が多数を占めるようになった。QRコード決済アプリの登場と急速な利用拡大はこのように、日本のキャッシュレス決済普及においてきわめて大きな貢献をしたといえるだろう。