日本人にとってのペイメントカードと言えば、まずクレジットカード、そして電子マネーという状況。そんな中、国際ブランドデビットカード(以下デビットカード)と国際ブランドプリペイドカード(以下プリペイドカード)は、絶対的な規模はまだ小さいですが2015年からの1年間で着実に拡大してきているということは、「インフキュリオン決済動向調査2016」に基づく前回記事でご紹介しました。
それでは、デビットカードやプリペイドカードは、どのような使われ方をしているのでしょうか?本稿ではその辺りの分析結果をご紹介しようと思います。
電子マネー決済単価
既に多くの日本人の日常生活の一部となっている電子マネー。その決済データは日本銀行が毎月公表している「決済動向」に記載されています。
- 「決済動向」、日本銀行Webサイト
例えば、2016年7月29日に掲載されたPDFファイルを見てみます。様々なデータが記載されていますが、電子マネーのデータは15ページ。以下のような項目があります。
- 決済件数
- 決済金額
- 1件当たり決済金額
- 発行枚数(携帯電話の項目もあります)
- 端末台数
- 残高
ここで注目するのは「1件当たり決済金額」。だいたい1000円くらいであることがわかります。コンビニなどちょっとした買い物における便利な決済手段として使われていると想像できます。(なお、日銀決済動向に含まれる電子マネーは、交通系や流通系のIC型電子マネーです。)
あまり高額なものを買う場合には電子マネーではなくクレジットカードのほうが普通です。クレジットカードのほうは決済単価は数千円と言われており、その利用頻度も電子マネーほど高くはないようです。「低頻度・高単価のクレジットカード」と「高頻度・低単価の電子マネー」といった位置づけとなっていると考えられます。
しかし、新しい決済プロダクトであるデビットカードやプリペイドカードに関してはその使われ方はどのようなものなのでしょうか。
単価と回数から見るペイメントカードの使われ方
出所:「インフキュリオン決済動向調査2016」を基にインフキュリオン作成
上の図は、「インフキュリオン決済動向調査2016」のデータを分析した結果で、クレジットカード・デビットカード・プリペイドカード・電子マネーの平均利用単価と月の平均利用回数を算出したものです。
前章で述べたような、「低頻度・高単価のクレジットカード」、「高頻度・低単価の電子マネー」という傾向がここでも確認できますが、興味深いのはデビットカードとプリペイドカードの位置付けです。
まずプリペイド。こちらは何と、電子マネーと同じような「高頻度・低単価」のエリアに位置しています。コンビニで使うとポイントが貯まりやすい、といったプロモーションの効果もあると思われますが、頻繁に便利に使える決済手段として、消費者にとっては電子マネーに近い存在と認識されている模様です。
それに対して、デビットカードは明らかに「低頻度」。利用回数がまだ小さく、ここぞという場面で使われているのでしょうか。そして平均単価は電子マネーとクレジットカードの中間あたりにあります。もっと利用回数が増えると、よりクレジットカードに近づいていくのではないかと思われます。
ここで注意すべきは、上図における金額や回数の数字自体にあまりこだわらないことです。2015年調査と2016年調査では、ペイメントカード同士の相対的な位置関係(つまり消費者による使われ方)は同じような結果が出ていますが、金額や回数の数値には差異があります。これはアンケートにおける複数の質問の回答結果から算出しているためで、実際の決済システムの利用データなどから算出しているのではないことが要因の一つ。あくまで、「消費者にとってこれらのペイメントカードはどのようなものなのか」という観点で理解すべき結果なのです。
さて、2回にわたって「インフキュリオン決済動向調査2016」から得られる示唆を紹介してきました。力強く拡大しているデビットカードとプリペイドカードですが、それらは消費者にとってはかなり異なる決済手段として認識されているようです。決済サービスのラインナップが多様化していく中、様々な生活シーンにキャッシュレス決済が溶け込んでいく様子をこれからも定点観測で明らかにしていこうとインフキュリオンは考えています。