インフキュリオン独自の「決済動向2025年調査」に基づいて日本のキャッシュレス決済市場の現状を考察するシリーズ第3回です。
第1回ではクレジットカードやコード決済アプリなど主要カテゴリーの利用率、そして第2回ではPayPayや楽天カードなど主要な個別サービスの利用率から、日本消費者のキャッシュレス決済利用動向について解説してきました。
- 第1回「コード決済アプリ利用率が過去最高を更新!非対面ではクレジットカードが群を抜く」、2025年6月27日
- 第2回「対面決済ではPayPay首位、非対面では楽天カード」、2025年7月7日
「決済動向2025年調査」では,特に国際ブランドデビットカード(以下、ブランドデビット)の利用率が大幅に上昇しました。また、若年層においてはコード決済アプリの利用率が高い傾向が見られます。今回は、これらの点を詳しく見ていきます。
主要カテゴリーの利用率のおさらい
まず、各カテゴリーの利用率の推移をおさらいします。
2025年4月の最新調査での利用率は以下となりました:
- クレジットカード: 81%(対前年+3ポイント、以下同)
- FeliCa型電子マネー: 55%(+1ポイント)
- ブランドデビット: 29%(+11ポイント)
- ブランドプリペイド: 5%(+1ポイント)
- コード決済アプリ: 72%(+4ポイント)
- 広義のBNPL: 14%(+1ポイント)
全てのカテゴリーで前年調査から利用率が増加していますが、中でもブランドデビットは前年比11ポイント増と大幅な伸びを示しました。
デビットカード年間取扱高の推移
日本銀行が毎月発行している「決済動向」では、「デビットカード」の取扱高が報告されています。
「デビットカード」にはブランドデビットだけでなくJ-Debitも含まれますが、実質的にはブランドデビットの取扱高と見て差し支えないでしょう。
いずれにせよ「デビットカード」取扱高は着実に増加傾向にあり、対前年成長率もプラスを維持しています 。特に直近の2024年度は対前年度成長率21%と、2023年度成長率を6ポイント上回っており、デビットカード利用拡大に勢いが増していることが窺えます。
図2 「デビットカード」年間取扱高と対前年成長率ブランドデビット利用拡大の背景には以下の要因が考えられます:
- 銀行アプリとブランドデビットを併せたリテールバンキング戦略の進展
- ネットショッピングでの決済手段としてのブランドデビットの浸透
- ネット銀行に加えて伝統的な銀行でもブランドデビット一体型キャッシュカードが普及
若年層に顕著なブランドデビットとコード決済アプリの利用
図3に、2万人の回答者を10代から60代までの6つの年齢階層に分け、年齢階層別に利用率を算出した結果を示します。
図3によると、クレジットカードは幅広い年齢層で利用率が高い傾向にあることがわかります 。ブランドデビットは10代・20代・30代で30%を超えており、若年層での利用獲得が進行していることが見て取れます。
特に注目すべきは、10代におけるコード決済アプリの利用率の高さです。他の年齢階層では、もっとも利用率が高いのはクレジットカードですが、10代においてはコード決済アプリの利用率がもっとも高くなっています。若年層がデジタルネイティブとしてコード決済を積極的に利用していることが窺えます 。