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トークンサービスプロバイダ事業とEMVCoのトークナイゼーション仕様

bloomua/Bigstock.com

インフキュリオンインサイトでも何度か取り上げているトークナイゼーション。Apple PayやSamsung Pay、Android Payなど、近年グローバルで注目を浴びているモバイル決済サービスが活用している基盤サービスの一つです。

トークナイゼーション概要

Apple Payなどが活用しているトークナイゼーションは、カード業界の標準化団体であるEMVCoが定めた仕様に基づくもの。しかし、公開されている仕様ドキュメントを見ても、トークンサービス事業者(トークンサービスプロバイダーと呼ばれる。以下TSP。)が提供すべき機能などは概略レベルでの記載のみで、新規にTSP事業をやりたい事業者にとっては不明点が多いものとなっています。

先日のブログ記事でも紹介した、米国ボストン連邦準備銀行(Federal Researve Bank of Boston)が公表しているトークナイゼーションの研究報告書でも、TSP事業に参入したい事業者が多いが、要件があいまいなので困っているとの記載があります。

現状ではTSP事業者はVisaやMasterCard、American Expressなど国際ブランドがありますが、EMVCo仕様ではTSPが国際ブランドに限定されているわけではなく、例えば欧州市場ではVodafoneが提供するモバイル決済サービスにおいて、Carta Worldwide社がTSPとしてトークナイゼーションサービスを提供することになっています。

参考情報

EMVCoも許容している、国際ブランド以外のTSPですが、問題はTSPになるために満たすべき要件が公表されていないこと。上記のCarta WorldwideのようにTSP事業に参入を表明している企業は実はグローバルで数社が既にあるのですが、どれもまだEMVCoの「お墨付き」は得られていない状況です。

上記のボストン連銀の研究レポートによると、EMVCoはトークナイゼーション仕様の改訂版を2015年後半にも公表予定で、そこにはTSPとなるための要件が記載される予定だとのこと。現時点では国際ブランドのほぼ独占状態にあるEMVCo型トークナイゼーションですが、これからは多様なTSPの参入によってますますトークン決済が普及していくことでしょう。

国際ブランド以外がTSPになれるのか、なれないのか。なれるとしたら、どうすればEMVCoの認定が得られるのか。これは何も単なる理論的議論ではありません。例えば日本では、国際ブランドのネットワークを経由しないオンアス(On-Us)取引の多いことが特徴の一つ。トークナイゼーションを利用しつつオンアス取引も維持できるのか、というのは国内イシュアにとっては大きな論点となります。

グローバルでの動きのインパクトを直接うけるようになってきた感のある国内決済市場。インフキュリオンは今後も海外動向をベースに国内市場の行方を見つめます。

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