金融(finance)と技術(technology)の融合による金融サービスの革新を起こすスタートアップの総称であるフィンテック(fintech)。当社インフキュリオンも東京のフィンテック関係者の集いである「Fintech Meetup」のスポンサー企業であり、フィンテックによるよりよい社会の実現を目指して活動しています。
今回は英国の経済紙The Economistに掲載されたフィンテックによる個人向けローンの記事をベースに、海外フィンテック企業による新しい与信モデルと融資サービスについて紹介します。
ITの普及によって豊富なデータが得られるようになった今日。従来は与信することができなかった顧客に対して、リスクを抑えながら与信することが可能になっています。
例えば、ECにおけるトランザクションレンディング。アマゾンの「Amazonレンディング」や、GMOイプシロンの「GMOイプシロントランザクションレンディング」なども、事業者の日々の状況を把握することができる立場にあるプレイヤーによる新たな融資サービスを言えます。
さて今回のThe Economist記事が紹介するのは、Kabbage、Upstart、そしてVouchの3社。それぞれが、従来の金融機関とは異なるデータに基づいて与信を行っています。
まずは米国アトランタを本拠とするKabbage。事業者ローンを組むことはできないが、個人ローンでの融資は受けることができるような、小規模事業者を対象とする融資を、その子会社Karrotにて展開しています。
従来型の融資に対するKarrotの特徴は、顧客の信用情報をあまり重視しないかわりに、顧客のキャッシュフローを監視するところ。これは上記のトランザクションレンディングの考え方と全く同じです。顧客は、自身の銀行口座やカード口座をKarrotが監視することに合意することが融資の条件で、3万ドルまでの融資を6%から26%の金利で受けることができます。収入が急に落ち込んだときにはKarrotからの確認が入ったり、逆に収入増があると与信枠の拡大の提案を受けることができるとのこと。Karrotは2015年には10億ドルの融資を行う見込みで、デフォルト率は5%程度とのことです。
米国パロアルトを拠点とするUpstartは、キャッシュフローではなく、顧客の学歴を重視するサービス。これは、学歴から将来の収入を予想しリスクを算出するという、日本以上の学歴社会である米国ならではの発想とも言えます。与信審査では、顧客の出身大学と学部、在学中の成績などを審査。高収入な職に繋がる理学・工学・数学の出身者は良いリスクスコアを与えられますが、安定した職に繋がる教育や看護なども高評価だとか。これは大学での専門がその後の職業選択やキャリアに大きく影響する米国だからこそ成り立つ方式と言えるでしょう。
本記事で紹介する3社目はサンフランシスコのVouch。2014年10月から、信用スコアの低い人向けに小額融資を行っています。もともと信用力の低い人に融資するためのポイントは、融資を受ける人の友人や親族に、融資額の一部を保証してもらうこと。ここでVouchは、その人の返済能力を踏まえて融資額を決めますが、金利はその人の友人・親族からの保証度合いに応じて決めています。
Vouchはまだ新しいサービスだけあって、現在までに実行した融資は数百件程度で、総額は200万ドル。今のところデフォルトした人はいないとのこと。マイクロクレジットのように、融資を受ける人の周囲を巻き込んだ融資を行うこのサービス、今後どのように成長するのでしょうか。
本ブログでは今後も、海外の面白いフィンテックサービスを紹介していきます。
参考情報
- 「アマゾン、販売事業者向け短期融資『Amazonレンディング』開始 最短3日で最大5000万円」、日本ネット経済新聞、2014年3月7日
- 「EC事業者向けのオンライン融資サービス『GMOイプシロントランザクションレンディング』を開始 〜日次の決済データをもとに与信判断、最短5営業日で成長資金を融資〜」、GMOインターネット株式会社、2015年3月6日
- 「Whom to trust」、The Economist、2015年8月13日
- Karrot社のサイト(https://www.karrot.com/)
- Upstart社のサイト(https://www.upstart.com/)
- Vouch社のサイト(https://vouch.com/)