常に持ち歩くスマホをカード代わりに使って決済する便利なモバイル決済サービスは既に幾つかありますが、これはどちらかというと非現金決済に抵抗のない「キャッシュレス派」の人向けサービスとも言えます。
まだまだ日本は現金重視の「キャッシュ派」がマジョリティ。ATMからの現金引出のためにはどうしてもキャッシュカードを持ち歩かなければなりません。
そんな「キャッシュ派」の人も、スマホさえあればATMから現金を引き出せると言いと思いませんか?本稿ではキャッシュカードの代わりにスマホを用いる、「スマホ時代のATM」の事例を紹介します。
米国・シカゴ市に拠点を置くWintrust Financial(以下Wintrust)は、15社の銀行を傘下に持つホールディング会社で、資産総額は200億ドル。2013年の夏から、カードの代わりにスマホを用いて現金を引き出せる「カードレスATM」のテストを続けてきましたが、2015年初頭から実運用を開始しました。2月までに傘下銀行の合計190台のATMをカードレスATM化しています。
このカードレスATMの使い方ステップは以下のとおりです。
- ユーザーは事前に、スマホアプリ上で、金額を指定して現金引出を予約する。
- ユーザーはATMにて、4桁の認証コードでアプリにサインインする。
- ユーザーは、スマホアプリ上で「カードレス」を指定する。スマホアプリはカメラ機能を起動する。
- ユーザーは、ATMの「カードレス」ボタンをタッチする。ATMはQRコードを表示する。
- ユーザーは、スマホアプリのカメラ機能でATMのQRコードを読み取る。
- ATMから現金が出てくる。
- スマホが、現金引出の通知を受信する。
ここで、ユーザーがATMに触れる必要があるのはステップ4だけです。Wintrustによると、通常は約40秒かかっている現金引出が、カードレスだと約10秒で終えることができるそうです。
百聞は一見にしかず。Wintrustが提供する動画(https://youtu.be/UtmW1l4QVhs)を見るとユーザーエクスペリエンスがイメージしやすいと思います。
Wintrustの顧客ベースは年配者が多く、スマホによるカードレス取引との親和性は高くありません。実はWintrustは、既存顧客の子の世代をターゲットとして考えているとのこと。効率的でスマートなカードレスATM取引で、若年層に訴求しようとしているのです。
Wintrustのカードレス取引をさらに進めたのが、ウクライナ最大の民間銀行であるPrivatBankが開発したトップレスATM(Topless ATM)。これはスマホ操作が前提のため、通常のATMの上部に装備されているディスプレイやタッチスクリーンすらないATM。上部が無いためトップレス、というわけです。
紹介動画はこちらです:https://youtu.be/8zU3k9U42KE
このトップレスATMは世界最初の「非接触Android ATM」とも呼ばれており、米国サンノゼで開催されたFinovate Spring 2014のデモ大会で、多くの聴衆の支持を集めたトップ8の1つに選ばれています。
まだ登場したばかりのカードレスATM。日本での実現もありえるのでしょうか。今後の動きを注視します。
関連情報
- 「Getting Cash? Phone It In: Wintrust Embraces the ‘Cardless ATM’」(American Banker、2015年1月13日記事)
- 「Banks use smartphones to eliminate ATM cards」(The Detroit News、2015年1月19日)
- 「PrivatBank’s Topless ATM became the breakthrough of Finovate 2014」(PrivatBank、2014年5月6日)