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米国銀行のモバイルウォレット戦略

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2014年のApple Payの開始から世界で注目を浴び続けているモバイルNFC決済。Android PayとSamsung Payという競合も出揃い、世界各国への展開を続けています。その普及率については諸説ありますが、Appleによると同社は毎週100万人のApple Payユーザを獲得しているとのこと。将来の決済シーンに大きな影響を与えていくことは間違いないでしょう。

米国ではApple、Google、SamsungというIT企業が先陣を切ったモバイルウォレット。カードイシュアとしての銀行は、自社カードをウォレットに登録してもらうことに注力していた面がありますが、ここへきて新たな動きが出てきています。本稿では、米国の大手銀行(つまり大手カードイシュア)のモバイルウォレットへの取組みを紹介します。

ウェルズファーゴ銀行のモバイルウォレット

米国リテール金融の大手であるWells Fargo(ウェルズファーゴ銀行)。デビットカードとクレジットカードのイシュアとしても大手です。もちろん、早い段階から自社カードをApple Payなどモバイルウォレットに対応させてきましたが、最近、独自モバイルウォレットの開始を発表して注目を集めています。

「Wells Fargo Wallet(WFW)」という名のこのウォレットは、Android端末向けの同社モバイルバンキングアプリの新機能。同社のデビットカードやクレジットカードを登録しておけば、Apple Pay等と同様に、リアル店舗のNFC端末での非接触決済が使えます。

既にApple Pay・Android Pay・Samsung Payにも対応してきた同行ですが、これらのモバイルウォレットはダウンロード~インストール~カード登録という初期ステップがハードルになるとも見ています。自社モバイルバンキングアプリのユーザにとっては、同じアプリがNFC決済機能を持つほうが利便性が高い、との見方に基づくようです。同社顧客にとっては、ITベンダのウォレットに加えて銀行ウォレットという選択肢もできるわけです。

ウェルズファーゴ銀行のAndroid版モバイルバンキングのユーザ数は2000万人を超えています。この巨大な潜在ユーザ基盤がどのように反応するのかは興味深いところです。

なお、米国の大手銀行が放つモバイルウォレットとしてはWFWは3番手。チェース銀行のチェースペイはQRコードベースですが、Capital One銀行のCapital One WalletはWFWと同じくNFCウォレットです。

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 モバイルウォレットでATM出金

NFC決済だけでなく、ATM利用にもモバイルウォレットを対応させる動きもあります。

Wells Fargo銀行とBank of America銀行はそれぞれ、NFC搭載の自社ATMにおいて、カード不要で現金引出できるサービスを開始しました。

こういった「カードレスATM」、「トップレスATM」と呼ばれるATMの動向についてはインフキュリオン・インサイトでも取り上げていましたが、今回の米銀のサービスはモバイルNFC対応である点が特徴。Apple PayなどNFC対応のモバイルウォレットがあれば、銀行カード無しに現金引出を行うことができます。(PIN入力は必要。)自社モバイルウォレットを開始したWells Fargoの場合は自社ウォレットでも同様にATM現金引出ができます。

2014年9月のApple Pay発表時点はNFC対応している店舗は約20万か所と言われていました。最近の情報ではNFC対応店舗は140万か所まで増大したと言われています。米国内で急速に普及しているNFC決済端末。それに合わせて、NFCベースのサービスも増えていくと見られます。

NFC普及があまり進んでいない日本ですが、海外の銀行やイシュアによるモバイルNFC対応事例は、日本市場の今後を占う上で参考になると考えます。今後も日本に示唆を与えるような動向をこのサイトで紹介していきます。

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