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日本のフィンテック最新動向:第6回FinTech MeetpとFinTech協会の設立

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FinTech協会設立発表とその反響

「フィンテック(FinTech)」とはFinance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、金融サービス領域において高度なIT活用を通してイノベーションを起こす取り組みを指しています。海外では大手企業によるフィンテック企業への出資や、既存大手金融機関とフィンテック企業の提携などが活発化しています。

そして日本のFinTech業界関係者が集まって情報交換・ネットワーキングする場として2014年からスタートした「FinTech Meetup」。当社インフキュリオンもスポンサー企業としてその運営の一翼を担ってきました。既に多くの記事が出ていますが、9月30日の第6回FinTech Meetupでは、一般社団法人FinTech協会設立発表も行われ、FinTech Meetupから始まった「日本のフィンテックを元気に」という活動は次の段階に進みます。インフキュリオンも、フィンテックを通して、よりよい日本を創ることにこれからも貢献していきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。(インサイト記事「フィンテックとインフキュリオン」も参照ください)

FinTech協会設立

関連情報

本稿では、このように盛りだくさんだった第6回FinTech Meetupの概要を紹介します。

Meetupの概要

 金融界に革新をもたらし既存プレイヤーの脅威となるとの見方もあるフィンテックですが、その本質はITを通したよりよいサービスの創出。顧客基盤やブランドを持つ金融機関と、「尖ったサービス」を提供可能なフィンテック企業にはそれぞれの強みや役割があります。様々なプレイヤーの議論や連携を通して、日本の金融業界を盛り上げていくことが、発展の道だと我々は考えています。
そんな中で開催された第6回のミートアップは、9月30日、日本橋茅場町にある東京証券会館で開催されました。日本資本主義の父と言われる渋沢栄一ゆかりの地でミートアップが開催されたことは、今後の金融業界とフィンテックの相互の発展を予感させるものでした。
150人以上の参加者が参集したミートアップは、会場スポンサーである平和不動産株式会社執行役員の中尾友治氏によるご挨拶で幕を開けました。金融マーケットの中枢を担う各証券取引所の不動産を管理する目的で設立された同社は、兜町における金融機能整備にも取り組んでいるとのこと。かつては取引所に人が集まってやりとりすることで行われていた証券取引も今は電子化され、無人で取引は処理されていきます。取引を遂行するために集まる場としての兜町の意義は確かに少なくなったのかもしれませんが、コミュニケーションを通じて新たなものを創造する場として兜町を位置づけようとされています。特に、兜町という場をフィンテック育成の場にしていきたいとのメッセージでした。

続いて、日本IBM株式会社のAPI Economy兼FintechアドバイザーであるRasmus Ekman氏による、「金融業界におけるAPIエコノミー」と題された基調講演。「金融機関にとってフィンテックは敵か、味方か?」という問いかけがよくなされていることを述べたあと、実際に米国の大銀行が担う機能それぞれについて、そのサービスを提供する専業フィンテック企業が既に存在することを指摘。これは「金融機関機能のアンバンドリング」と呼ばれることが多いですが、下記URLサイトの図のように、銀行のWebサイトに掲げられた各機能についてフィンテック企業が存在している状況を見ると、従来の金融機関の事業領域がフィンテック企業によって脅かされているようにも見えるのは確かです。

参考情報

ここでEkman氏は、Citiや北欧のNordea銀行、オーストラリアWestpac銀行などの欧米の金融機関はフィンテックと協業していこうという動きが活発化していることを指摘。そこで「ハッカソン」を連携のきっかけとして開催することが多くなってきていることを紹介しました。

ハッカソンとは、「ハッカー・マラソン」。ハッカーというと企業などの情報システムに勝手に入り込み悪いことをする人物のようなイメージが日本では持たれがちですが、もともとの意味は「創造的なやり方で問題を解決する人」。ITスキルを持ったハッカーたちを集めて課題を与え、決められた時間内(例えば2日間)でデモを作って優劣を評価するというイベントをハッカソンと呼びます。Ekman氏はここでNordea銀行が開催した「Nordea Innovation Challenge」というハッカソン事例を動画で紹介。これは、2日間で「次世代モバイルバンキングアプリ」または「次世代コンスーマーサービスのためのデータ分析」という2つのテーマに関して、スウェーデンとフィンランドからの有志たちが参加したものでした。

参考情報

金融機関がフィンテックを取り込んでいくにあたっては、API(外部のソフトウェアと連携するために作られた接点)を介した連携が主流となっているとのことで、今後の日本の金融機関とフィンテックの連携においても普及していくと思われます。最後にEkman氏は、日本IBMはテクノロジー提供、ベンチャー企業支援、大手金融機関とのシステム連携、フィンテックコミュニティへの参加とサポート、といった活動を通してフィンテックの発展を支援してゆくと述べ、基調講演を締めくくりました。

参考情報

そしてFinTech Meetup事務局からのFinTech協会設立の発表に続きましたが、そのあたりは前掲の報道記事などに詳しく記載されています。今回のミートアップは、協会という、今までよりも大きな活動に繋がるイベントでした。FinovateFallの報告記事でも書きましたが、欧米では既に金融機関とフィンテックの共生関係が確立しつつあります。今後の日本金融業界はフィンテックとどのようにつきあっていくのか、これからの一年は大きな転機となりそうです。

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