2014年のApple Pay(アップルペイ)の登場で盛り上がりを見せている海外モバイル決済。サムスンのSamsung Pay(サムスンペイ)、グーグルのAndroid Pay(アンドロイドペイ)、そして米国小売企業団体MCXが放つCurrentCなど、2015年中には競合サービスも登場し、さらなる盛り上がりを見せる方向です。
これらの動向やその後ろにある新技術(トークナイゼーション、MST)についてはインフキュリオン・インサイトでも何度が取り上げています。今回はSamsung PayとCurrentCに関する最新の動向を紹介します。
まずはSamsung Pay。2014年10月のApple Pay開始から半年後の2015年3月に発表されたこのサービス、2015年中ごろに米国と韓国で開始とされていましたが、ようやくその開始時期が公表されました。韓国では8月20日、米国では9月28日です。
EMVCo型のトークナイゼーションや決済時の指紋認証、NFC(非接触EMV)決済などApple Payと同等機能を搭載したSamsung Pay。大きな差別化要因はMST(magnetic secure transmission)です。NFC対応端末が店舗側に必要なNFC決済と異なり、MSTでは、NFC非対応の既存磁気端末で非接触決済をしてしまう驚異の技術。これにより、サービス開始当初からほとんどのカード加盟店での利用が可能です。(Apple PayはNFC対応端末を備えた加盟店でのみ利用可能。)
また、1,200万人の稼働会員を誇る、米国のハウスクレジットカード大手のSynchrony Financialもサムスンと提携。SynchronyBank発行のハウスカードもSamsung Payに登録して利用可能という点も優位点の一つと言えるでしょう。
サービス開始当初から既存カード加盟店で使えるというSamsung Pay。Apple Payに対抗してゆくにあたっての大きなポイントですが、決済の現場で問題なく使えるのか、サービス開始後の市場の反応も注視します。
クレジットカード業界との協力関係をベースに展開するApple Pay・Samsung Pay・Android Payに対して、カード業界との対決のために開発が進められているCurrentC。約3年間の開発期間を経て、実店舗での試行を開始するとの報道が最近なされたばかりです。2015年中のローンチの計画でしたが、8月12日のRe/codeとのインタビューにおいて、MCXのブライアン・ムーニーCEOは、ローンチ時期が2016年にずれこむ可能性に言及しました。
そうでなくとも、開発中にハッキング攻撃で情報漏洩してしまったり、MCX加盟の大手小売企業から大量のカード情報が盗まれたり、MCX加盟企業のNFC型(カード業界型)モバイル決済サービスへの乗り換えなど、悲観材料の多いCurrentC。ここへきてのローンチ延期の可能性で、ますます勢いがそがれる感は否めません。
カードインフラを経由しない独自決済として成功する使命を背負ったCurrentC。その動向は今後も随時紹介していきます。
参考情報
- 「Apple Payと競合に? 米小売店連合MCXの決済サービス「CurrentC」が間もなく一般提供開始」、マイナビニュース、2015年8月12日
- 「米薬局チェーン、これまでブロックしてきた「Apple Pay」や「Google Wallet」などに対応へ」、CNET Japan、2015年8月12日
- 「Apple Pay競合の「CurrentC」、全米でのサービス提供は2016年にずれ込む可能性」、CNET Japan、2015年8月13日
- 「Apple Pay Competitor CurrentC May Not Launch Until Next Year」、Re/code、2015年8月12日
- 「Samsung Announces Launch Dates for Groundbreaking Mobile Payment Service: Samsung Pay」、BusinessWire、2015年8月13日
- 「Synchrony Financial Enables Private Label Credit Card Benefits Through Samsung Pay」、BusinessWire、2015年8月13日