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サムスンペイとアップルペイ

mipan/Bigstock.com

2015年3月1日、サムスンはスマホ新機種である「GalaxyS6」に、決済サービス「Samsung Pay(サムスンペイ)」を搭載すると発表しました。2015年夏から、米国と韓国でサービス開始予定です。

磁気セキュア伝送技術(Magnetic Secure Transmission, MST)、NFC、トークン化、指紋認証という技術要素を盛り込んだSamsung Pay。2014に発表されて注目を集めたApple社の「Apple Pay(アップルペイ)」と対比しながら、その概要を紹介します。

スマートフォンによる効率的な決済を実現するという点ではApple Payが先行し、遅れをとったかたちのサムスンでしたが、今回のGalaxy S6の発表で巻き返しを図っています。Apple Payを研究し、その弱点である加盟店普及を、新技術によって克服しています。

まず店側での決済端末。Apple PayはNFC端末が前提となっています。決済端末の将来はNFCとの見通しと思われますが、その普及はまだ途上。サービス開始時点で米国では22万店舗しかNFC対応していないことで、Apple Pay拡大の阻害要因であり続けています。

対してSamsung Payですが、こちらは先月2月に買収を発表したLoopPay(ループペイ)社の「磁気セキュア伝送技術(MST; Magnetic Secure Transmission)」を搭載することで、従来型の磁気ストライプ対応端末での非接触決済を可能としています。さらにNFCチップも搭載することで、Samsung Payは、カード決済対応店舗ならばどこでも利用可能になっています。サービス開始直後からどこでも使えるSamsung Payと、NFC対応加盟店でしか使えないApple Pay。両者の今後の利用拡大の大きなポイントとなる見込みです。

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Apple Payの売りの一つは、トークン化と指紋認証で実現している高いセキュリティ。Samsung Payも同様に、トークン化と指紋認証を取り入れています。トークン化とは、VisaやMasterCardが標準化団体EMVCoの標準仕様に基づいて提供しているサービスで、16桁のカード番号から生成した数列(トークン)を使って決済できるというもの。カード番号と違って、もし漏洩しても不正利用リスクが無いという特長があります。Samsung Payは、VisaのVisa Token ServiceとMasterCardのMDESをベースとしており、MSTによる磁気端末決済とNFC決済の両方でトークンを使用。ほかにも、端末にはカード番号を格納しない(トークンのみを格納する)点や、決済時に端末で指紋認証を行う点も、Apple Payと同等です。(注:Apple PayはAmerican Expressのトークンサービスにも対応しています。)

トークン化をベースとするので、Samsung Payに登録可能なカードは、Samsungと提携したイシュアのものとなります。サムスンのプレスリリースによると、American Express、Bank of America、Citi、JPMorgan Chase、U.S. Bankといった大手イシュアとの提携を進めている模様です。AppleはApple Payの決済金額の一部をイシュアから手数料として徴収していると言われますが、Samsung Payのビジネスモデルは現時点では不明です。

サービス開始時期という点ではApple Payに遅れをとったとはいえ、MSTによってApple Payの弱点を克服しつつ、他の面では同等レベルのサービス内容としたSamsung Pay。2015年夏から米国と韓国でサービス開始予定です。日本においてはまだトークンサービスの開始時期が未定のため、Apple Pay・Samsung Payとも開始時期は未定です。今後の動向が注視されます。

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