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QRコードで電車に乗ることが可能に!QRコード活用事例~「Q SKIP」、「スルッとQRtto(クルット)」

1994年に製造現場の声から生まれたQRコード(※1)。現在では飲食店での注文やレジャー施設への入場など、様々なシーンで活用されています。特に決済シーンにおいては、2010年代後半から始まったコード決済が2023年にはキャッシュレス決済全体の8.6%を占めるまで急拡大しており(※2)、利用場所も多岐にわたるようになりました。

(※1)QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

(※2)出所:経済産業省プレスリリース「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2024年3月29日)

直近では、これらの利用に加えてJR東日本等の首都圏の鉄道会社8社が電車の乗車券を、従来の磁気タイプからQRコードタイプに置き換える方針を発表しています。2024年5月29日付の共同発表資料によると、QR乗車券への置き換えには以下の3つの目的があるとのことです。

  1. 持続可能なシステムへの移行
  2. より環境にやさしい用紙への置き換え
  3. お客さまサービスの向上

出所:「鉄道事業者8社による磁気乗車券からQRコードを使用した乗車券への置き換えについて」(2024年5月29日)

今回は、QRコードで電車やバスに乗ることができるサービスを提供している東急電鉄の「Q SKIP」とスルッとKANSAI協議会の「スルッとQRtto」について紹介します。

「Q SKIP」は東急電鉄株式会社の登録商標、「スルッとQRtto」は株式会社スルッとKANSAIの登録商標です。

QRコードによるデジタル乗車券

「Q SKIP」は2023年8月、「スルッとQRtto」は2024年6月にリリースされたデジタル乗車券サービスです。この2つのサービスでは、ネット上でいつでもどこでも電車・バスの乗車券や観光施設を利用できるチケットの購入が可能で、購入後に発行されたQRコードを改札口にかざしたり、スタッフに提示したりすることで利用ができます。

両社とも交通系ICカード(以下ICカード)にとり替わるサービスではなく、ICカードを持たない旅客や一時的な利用客のためのサービスと位置付けて展開しています。そのため、販売対象商品は、これまで駅の改札窓口や切符売り場でしか購入できなかった対象区間における1日乗車券や施設と連携したチケット等の企画乗車券となっています。

「Q SKIP」では、各商品を「Q SKIP」限定価格で販売したり、沿線上にある施設入場券や食事券がセットになった「Q SKIP」限定チケットを展開したりしています。また、キャッシュバックや乗車券半額といったキャンペーンも頻繁に行っており、顧客に対して「Q SKIP」ならではの施策を打ち出しています。

「スルッとQRtto」は関西の鉄道・バス会社7社が参画し、対象区間における1日乗車券以外にも、対象区間における電車・バスの乗り放題や、大阪の40以上の施設と連携し、入場無料や割引等の特典を付帯した「大阪周遊パス」も販売しています。外国人旅行者を意識してWebサイトは6か国語で表示出来たり、スマホを持たない子供や高齢者のいる家庭を考慮して、1アカウントで複数枚のチケット購入ができたりといった対応も行っています。

QRコード型デジタル乗車券の共通的な課題

QRコード型デジタル乗車券を運営するにあたっての課題として、大きく2つ考えられます。

1つ目は他社線との連携です。相互乗り入れの他社線の駅で入出場時に、従来の磁気乗車券と同様に改札窓口で手続きを行う必要があり、他社線と連携した対応が求められます。

2つ目は、QRコードの読み取りに対応した改札口を設置することです。従来の改札機にQRコード読み取り機を増設する必要があり、対応していない駅の場合は改札窓口での手続きが必要です。また、QRコードの読み取りに対応した改札機が少ない場合、顧客が改札機を探すだけで一苦労ということも考えられます。

今後の展望

「Q SKIP」は今後、既にリリースされている東急線アプリに「Q SKIP」購入機能を搭載し、さらには有料座席指定サービス「Q SEAT」と連携したり、その他移動手段と連携したりすることで、東急沿線におけるMaaS事業を目指しています。また、東急グループとして、「Q SKIP」利用によって得た会員の移動情報、降車駅での滞在時間等の情報を活用し、グループを横断するサービス開発、体験設計の構築も計画しています。

一方、「スルッとQRtto」は、単一事業者ではなく協議会として運営している強みを活かして利用できる交通機関を拡大する方針を示しています。また、提携施設も拡大することによって、企画乗車券の種類も増やすことができ、より幅広いサービスを展開することも計画しています。

最後に

このようにQRコードを活用することで、これまでICカードを持たない場合は現地決済が必要だった鉄道やバスの乗車券や運賃の支払いを事前に行うことができるようになり、旅客はスムーズな移動が可能になりました。QRコードは今後、鉄道やバスの旅客以外にもより多くの人に対して魅力的なサービスになることを期待しています。引き続きQRコードの活用に注視します。