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アンドロイドペイとグーグルウォレット

bloomua/Bigstock.com

5月28日、Googleは、Android Pay(アンドロイドペイ)の開始とともにGoogle Wallet(グーグルウォレット)の位置づけを見直し、前者はモバイル決済、後者はPtoP送金という布陣とする計画を公表しました。3月の発表以来、情報のなかったAndroid Payですが、ようやくGoogleのモバイルペイメント事業の戦略が明らかになりつつあります。

Android Payのサービス概要は3月の発表時点から大きな変更はありません。Apple Payと同様に国際ブランドによるトークナイゼーションを利用する点、米国でサービス開始予定であり、利用可能箇所は70万か所程度である点、決済時には指紋認証を行うことでよりセキュアな決済とする点、などです。

なお、利用可能場所が70万箇所というのは、NFCによる非接触EMV決済に対応している店舗の数と見られ、Appleが発表しているApple Pay利用可能場所の数と同数となっています。2014年9月のApple Pay発表時点ではこれは20万箇所でしたが、その後8か月程度を経て3倍以上に拡大しており、米国内での非接触EMV決済の普及度合いを示すものとしても興味深い数値です。

Apple Payに対するAndroid Payの大きな差別化ポイントは、小売などの加盟店によるリワードプログラムに対応するとした点でしょう。Apple Payは現時点でリワードプログラムに対応しておらず、加盟店からの要望事項の上位に挙げられてきたようで、Android Payのほうがいち早く対応を打ち出したことになります。ただし、Appleも来月の開発者向けイベントでリワードプログラム対応を公表するという見方もあり、Android Pay開始時点では大きな差異とはならない公算もあります。

興味深いのはGoogle Walletの位置づけです。2011年の開始以来サービス拡大に向け様々な手を打ってきましたが、なかなか普及しなかったのが実態です。カードイシュアー(米国では銀行がイシュアーです)、国際ブランド、携帯キャリアなどのステークホルダーからの支持が得られなかったのが大きな要因と見られています。

Androidスマートフォンでの決済は今後はAndroid Payに集約し、Google WalletはPtoP送金アプリに位置づけ変更される計画です。過去に本ブログでも紹介したとおり、PayPal傘下のVenmo、SquareのSquareCashなどが若い世代を中心に急速に拡大しており、モバイルでの決済/送金の分野でのGoogleプレゼンスを強化する施策と思われます。Google WalletはAndroidとiOSの両方に対応する予定とのことで、iPhoneユーザーも対象として取り込んでいくようです。

2015年夏にはサムスンのSamsung Payも開始予定で、米国モバイル決済市場はさらなる盛り上がりを見せていきます。日本市場におけるモバイル決済の在り方に関する示唆を得るためにも、今後も米国市場の動向を注視します。

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