米国で広く普及しているブランドデビット
国際ブランド加盟店でクレジットカードと同じように使えるブランドデビット。決済時点で利用金額を銀行口座から即時に引き落とすため、クレジットカードのような与信が伴いません。日本ではまさに発行拡大の途上で、2016年1月時点ではメガバンク・地方銀行・ネット銀行を含む15社から発行されている状況ですが、米国では既に広く普及しており、その取扱高はクレジットカードに匹敵する規模です。基本的に銀行口座保有者には誰でも発行できるため、世界的にもカード決済と言えばデビットカードという国も多いのです。
参考情報:
- Nilson Reportの1057号(2015年2月)の表紙には国際ブランドの取扱規模が示されている。VisaデビットとMasterCardデビットはそれぞれ、Visaクレジット、MasterCardクレジットと同水準の取扱規模だ。
米国などでこのように広く普及しているブランドデビット。生活者にとっての使い勝手はクレジットカードとほぼ同様ですが、一つ大きな違いがあるとすれば紛失/盗難時の心理的影響。不正利用されてしまうとそれが口座のお金が即時に失われる、というのでは、例えイシュアによる補償ポリシーでカバーされていたとしても、心中穏やかではいられないのが人情です。
そんな生活者の心配に応えてくれるサービスを、米国の最大手銀行のひとつBank of Americaが開始したとNew York Timesが報じました。
安心を提供するロック機能
その安心機能とは、「デビットロック」機能。オンラインバンキングやモバイルバンキング経由で、生活者が自由にデビットカードのOn/Offを切り替えられる、というものです。紛失かな?と思ったときにはすぐに自分でOffにすることができ、もしカードが無事に見つかれば再びOnにして使い続けることができます。
このようなカードOn/Off切替機能は特に新しくは無く、数年前から既に存在するものですが、全米規模の大手銀行でも開始になったということで記事になった模様です。同機能を提供しているベンダーとしてMalauzai Softwareの名を出していますが、FinovateFall 2015ではTranwallも同様のサービスを紹介していました。Malauzaiによると、同社のクライアントである小規模金融機関350社のうち約半数が既にデビットロック機能を提供しているとのこと。
面白いのはデビットロック機能の使われ方です。紛失時などにだけ使われる機能、と想定していたところ、「カードを常時Offにしておき、決済利用するときだけOnにする」という生活者がけっこういるとか。紛失や不正利用に対する防衛手段としの価値を見出すユーザーが想像以上にいたようです。
参考情報:
- 「A Way to Lock Lost Debit Cards, From a Big Bank」、New York Times、2016年2月3日
- Malauzai Software(http://www.malauzai.com/mox-everywhere/consumer/)
- Tranwall(http://tranwall.com/tranwall-transaction-control/)
日本に対する示唆
クレジットカード発行枚数が人口を大きく上回り、保有可能かつ利用意思のある人にはクレジットカードが既に行き渡っている感のある日本。学生やシニア、専業主婦など、非与信層にも持ってもらえる決済プロダクトとしてのブランドデビットに期待が集まっています。
しかし日本のクレジットカード非利用者に聞くと、「使い過ぎが不安」「セキュリティが不安」といった、漠然とした不安感が利用障壁となっているのも事実。ブランドデビットによるさらなるキャッシュレス利用者の掘り起しには、そんな漠然とした不安感を払いのけてあげる必要があると思われます。
そんな中、米国で広がりを見せているデビットロック機能。無論、デビットだけでなくクレジットカードにも使える機能です。自分でOn/Offを切り替えられる、常時Offにしておいて使いたいときだけOnにする、といったことは、生活者自身がカード管理できる幅を広げることになり、「漠然とした不安」の払しょくに効果がありそうです。