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暗号資産を利用した新たな決済サービス海外事例 〜 UpholdとCrypto.com 〜

キャッシュレス決済の中で、日本人にとって最もなじみ深いのは、カード決済でしょう。当社が行っている決済動向調査によると、クレジットカードの利用率は78%前後を推移し、最も利用されている決済手段であり続けています。その他にもデビットカードやプリペイドカードがカード決済で使用可能となっています。

これらのカード決済にはファンディングソース(支払い原資)が必要となります。決済における利用額を支払う原資のことであり、クレジットカードならば発行業者によって設定される与信枠、デビットカードならば銀行口座、プリペイドカードならば事前の現金チャージが一般的です。

近年海外では、発展の著しい暗号資産をファンディングソースとし、カード決済サービスに新たな価値を加え提供する事業者が登場してきています。今回はそうした事業者を紹介し、日本でのカード決済サービスの展開を紹介します。

カード決済サービスの新たな付加価値

カード決済は、与信枠や銀行口座をファンディングソースとして、キャッシュレスでの支払いができるというものです。クレジットカードの発行会社への支払いも最終的には銀行口座から行われるため、これまでのカード決済は、オンラインでの支払いも可能な現金支払いの代替手段といえるものでした。

そんな中、暗号資産の取引マーケットプレイスを提供している事業者の中から、暗号資産も現金同様にファンディングソースにできる資産であると考え、ユーザーが所有する暗号資産を利用したカード決済サービスを提供する事業者が登場し始めました。

暗号資産による支払いというアイデアは暗号資産の普及の始まった2014年頃からありましたが、ここ数年のさらなる暗号資産取扱高・取引者の拡大を受け、本格的にサービス提供に乗り出す事業者が登場してきています。

今回紹介する2社はそれぞれの形で、自社のプラットフォームで取引をするユーザーに、決済と資産形成のサイクルという新しい付加価値を提供しています。

Uphold

1つ目に紹介するのは米Upholdです。Upholdは300万人以上のユーザーを抱え、暗号資産、貴金属、国別通貨、アメリカ株式へのアクセスが可能なプラットフォームを提供しています。このプラットフォーム上では、米ドルによる仲介なしで、各資産を直接交換することができ(金⇔ビットコイン等)、競合にない大きな強みと言えます。

Upholdはこのプラットフォームのユーザーにmastercardブランドのデビットカードを発行しています(2020年3月~)。デビットカードはUphold上の資産をファンディングソースとしており、ユーザーは保有する暗号資産、国別通貨、貴金属の中から好きなもので支払をすることができます。その支払に対する換金手数料もかかりません。そのため、ユーザーは銀行口座の現金で支払うのと同じような感覚で決済を行うことができます。

そして、国別通貨で支払えば同じ通貨を、暗号資産で支払えば暗号資産をユーザーはリワードとして受け取ることができます。ユーザーはリワードによって再び投資を行い、決済時にはまたその資産を使用することができます。

Crypto.com

次に紹介するのがCrypto.comです。Crypto.comでは暗号資産を利用した資産運用、貯蓄、消費が可能であり、消費の手段として、Visaブランドのプリペイドカードを発行しています(2018年~)。暗号資産や他のカードによってチャージが可能なプリペイドカードとなっており、実質的にはデビットカードと同じ仕組みと言えます。

Crypto.comのカードは、ユーザー個人が自社のトークン(暗号資産の一種、既存のブロックチェーン上で作られる)である「Crypto.com Coin」(CRO)をどれだけステーキング(暗号資産を売却せずに一定期間保有する制度)しているかによってランク、特典が変わってきます。SpotifyやNetflix、Amazon Primeといったサブスクリプションが実質無料となるなど様々な特典がある他、支払額に対するリワードもランクが上がるごとに1%→3%→5%→8%となっていき、非常に高水準となります。このリワードはCROとして付与され、消費を行いながらも資産を形成していくことができます。

Crypto.comは、魅力的な特典を求めてユーザーがCROに投資することで、自社トークンの価値の上昇が見込め、ステーキングによって長期的に保有されることで価格の安定も期待できるため、投機というよりも投資資産としての側面が強いといえます。もちろんCROの価値の上昇は保有するユーザーにも還元されるため、好循環を生む仕組みであると言えます。

日本での展望

暗号資産を活用したこれらのカード決済サービスの事例から学べることは多くあります。

一つは決済だけでサービスを完結させないということです。2社共に、カード決済のリワードで資産形成を行う場をユーザーに提供し、決済×投資という新たな領域を開拓しています。

日本国内では、暗号資産とは違う形でそうしたカード決済サービスの登場が始まってきています。近年、カード会社と証券会社の提携により、クレジットカードによる投信積み立てが可能なサービスが何件か登場し、若年層を中心に利用が拡大しています。今年8月には、「バンドルカード」で知られるカンムが、資産形成に活用できるクレジットカード「Pool」をリリース予定と公表しました。まだ詳細は明らかにされていませんが、投資資産をファンディングソースにすることができるサービスのようです。

暗号資産に関連した決済サービスはまだまだ少ないですが、国内の取引金額は2017年度の飛躍後から高い水準を維持し2019年から再び上昇を始めています。今年度の取引金額は過去最大が見込まれ、日本国内でも今回紹介したような暗号資産を活用した決済サービスが提供される日も近いでしょう。

国内の暗号資産取引実績

  • 一般社団法人日本暗号資産取引業協会、「統計情報

決済×投資の領域はまだ開拓が始まったばかりですが、それをカバーするサービスは間違いなくユーザーの利益となるでしょう。今後の発展に期待したいです。