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欧州のキャッシュレス化状況の多様性

国と業界が団結してキャッシュレス化の推進に取り組んでいる日本。そこで引き合いに出されるのはスウェーデンやデンマーク、英国など欧州の「キャッシュレス先進国」の状況です。

確かにこれらの国々はキャッシュレス化の「お手本」と呼べるかもしれませんが、欧州全体で見た場合のキャッシュレス状況はどのようなものなのでしょうか。そのような疑問に応えるような統計データが欧州中央銀行(European Central Bank; ECB)から出ていますので、今回はそのデータをもちいて欧州の状況について考察しようと思います。

欧州のカード利用状況

日本では電子決済というとクレジットカードと並んでIC型電子マネーが普及しています。しかしこれは日本独特の状況であって、グローバルで見ると個人が日常生活で利用する電子決済というとやはりクレジットカード等のカード決済です。

それでは欧州におけるカード決済はどのような状況にあるのでしょうか。まずは図1をご覧ください。

図1 2000年~2013年のEUの一人当たりカード利用回数の推移(ECBのデータを基に作成)※追記:クレジット、デビット含む

EUにおいてもカード利用が順調に拡大を続けてきていることが見て取れます。

欧州内のキャッシュレス化の多様性

しかし図1はEU平均値です。平均でみるとカード利用が着実に拡大してきていますが、それは欧州域内各国で差はないのでしょうか。実はECBはこの疑問に応えてくれるデータも公開しています。

図2 2012年~2015年の欧州諸国の一人当たりカード利用回数の推移(ECBのデータを基に作成)※追記:クレジット、デビット含む

これを見ると、一人当たりカード利用回数が多いのはデンマーク、スウェーデン、フィンランド、英国、そしてオランダ。ここまでは年間200回以上というカード利用意欲の旺盛な国々です。そしてエストニア、ルクセンブルクまでがカード利用のトップランナーと言えるでしょう。その次のフランスは一段階少ないレベルとなっています。

主に欧州北部の国々でカード利用とキャッシュレス化が進んでいっています。

それでは逆に、カード利用回数が少ないのはどこでしょうか。図2の右側に目を向けると、スペイン、ドイツ、イタリアなどが目に入ります。EU主要国であっても、このようにカード利用が少なく、キャッシュレス化もそれほど進んでいない国があるのです。ドイツやイタリアは年間利用回数が50回未満ということで、上で述べた200回以上のカード利用先進国とはかなり異なった消費者行動を示していると言えます。

キャッシュレス化の進展状況は国によってそれぞれ。そのような単純な事実が、このECBデータから浮き彫りになりました。