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ブロックチェーンによる革新的新サービス創造の動向

duallogic/Bigstock.com

参加者による分散処理によって維持されているビットコイン。日本ではマウントゴックス社の破たんに起因するネガティブイメージが強いですが、世界の金融機関はその基盤技術であるブロックチェーンに着目、その活用による革新的新サービスの創造の動きを加速しています。例えば未公開株取引のシステムをブロックチェーンベースで構築した米Nasdaq。ブロックチェーンはこのように、不特定多数の参加者間での取引を可能にする仕組み。このように考えると、例えばビットコインは、「ビットコインの所有権の移転」をブロックチェーンで行っているという、いわばブロックチェーン技術の応用例の一つに過ぎません。

加速している金融革新の動きを理解するためには、ブロックチェーンの基本の知識があるほうがよいですが、多くの場合それは「中央管理者無しで参加者全員の合意によって維持されている分散台帳」という程度の説明しかありません。

本稿でブロックチェーンの全貌をご紹介するのは難しいですが、著者が執筆したブロックチェーン紹介記事が月刊カードウェーブ誌9月・10月号に掲載されましたので、その概要を紹介したいと思います。

ブロックチェーンによる分散台帳

ブロックチェーンによる分散台帳

カードウェーブ誌では、「ビットコインを支えるブロックチェーン技術 その革新的な仕組みを用いた新サービス創造の動向」と題して、ブロックチェーンの基本とビットコイン以外への応用の動きを解説しています。

前半部分のブロックチェーン解説は、全ての始まりとなった正体不明の暗号研究者サトシ・ナカモトの論文をベースとしたもの。しかし決済・金融業界関係者にわかりやすいように、まずは従来型の取引台帳管理のスキームから説明をスタートします。従来型スキームでは、中央管理者が取引台帳を管理しており、全ての取引はそこを経由して行われます。そのポイントは、参加者は中央管理者を信頼すればよく、取引相手を信頼する必要は無いということ。その必然として、中央管理者は信頼に足る業務とシステムを運用しなければならず、そのコストは取引時の手数料として利用者に転嫁されます。

それに対してブロックチェーンによる分散管理は、参加者それぞれが取引台帳を管理するもの。取引が行われた際には当事者がその事実を全参加者にブロードキャスト(同報送信)し、受信者は自分の取引台帳にその内容に反映します。

もし参加者全員が正直者で、かつ通信ネットワークも理想的なものであれば、全参加者の取引台帳の内容は常に一致しており問題は生じないはずです。しかし現実には悪意を持った参加者が相手を騙して利得を得ようと偽の情報を送信したりもしますし、ネットワークによる通信遅延はありますし、その通信遅延を悪用して不正をしようとするものもいます。

そんな悪意の参加者による攻撃があると想定しても、それでも取引台帳の分散管理を実現する仕組みがブロックチェーン。その具体的仕組みは記事を参照していただきたいですが、「作業証明(Proof of Work)による台帳の正当性の証明」と「採掘者による台帳の維持管理作業へのインセンティブ付与」がビットコインの成功に大きく貢献したポイントです。

上述したとおり、ブロックチェーンはまずビットコインというアプリケーションを実現するために使われましたが、「相互に信頼関係の無い不特定多数の参加者間の権利の移転」を実現するのに適しています。例えばホンジュラスではブロックチェーンをベースとする土地の登記の仕組みが構築中ですし、ギリシャでも同様の仕組みを検討したことがあります。このように、冒頭に上げた未公開株取引など紙ベースで時間のかかっていた取引の効率化という観点で多数の取組みがあります。

日本ではOrb、mijinといった独自のブロックチェーン技術によるサービス創造を行っている会社もありますが、欧米では大手金融機関による取組みが公表されており、カードウェーブ記事では既に述べたNasdaq、Visa、Citibank、キャピタルワン、Fiserv、NYSE(ニューヨーク証券取引所)、BBVA、USAA、ゴールドマン・サックス、UBS、ニューヨーク・メロン銀行、Fidelity Investmentsなど大手の取組みを簡単ではあるが列挙しています。

日本ではビットコインの陰に隠れてしまっている感のあるブロックチェーンですが、グローバルではブロックチェーンによる革新の動きはもう始まっています。その革新はどのような形で実現されるのか、そこで日本はどのような役割を果たすのか、これからも目が離せません。

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