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海外FinTech事情:資産運用のロボアドバイザー

Casanowe/Bigstock.com

FinTechとロボアドバイザー

金融(Finance)と技術(Technology)の融合によって、便利で敷居の低い金融サービスを実現するものであるFinTech(フィンテック)。前回のインサイトで考察したオンライン融資プラットフォーム(かつての「PtoP融資」)と並んで有名なサービスが「ロボアドバイザー」。アルゴリズムによる資産ポートフォリオ組成と運用で、手数料を低く抑えつつも投資のリターンを最大化することが売りのサービスで、米国ではWealthfront(ウェルスフロント)社、Betterment(ベターメント)社などが有名です。

預貯金の利率はほぼゼロで推移している今の日本。各種の投資商品を組み合わせた資産運用の必要性がよく言われますが、そうはいってもなかなかそれは敷居が高い。めまぐるしく変わる経済状況や株式相場にまどわされず、感情に左右されずに最適なアクションを取り続けるというのは普通の人間にはなかなか難しいものです。資産保有層には、プロのファイナンシャルアドバイザーによるサービスなどがありますが、マス層には向いていないなど課題がありました。

そういった状況下で、資産運用のすそ野を広げることにも一役買うことが期待できるロボアドバイザーですが、米国市場ではロボアドバイザー専業のFinTech企業が伸び悩んでいます。て英The Economistの論考をベースに紹介します。

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米国で伸び悩む新興プレイヤー

カリフォルニア州を拠点とするWealthfront社と、ニューヨーク州のBetterment社。記事によると、それぞれの運用資産残高(AUM; Asset Under Management)は29億ドル程度あるとのこと。この2年で伸びてきたようで、FinTech領域で期待される急速な成長を体現してきた新興プレイヤーと言えます。

1年間で1%~3%程度の手数料がかかってきた従来のファイナンシャルアドバイジングにたいして、ロボアドバイザーの手数料は0.25%程度。既に述べたとおり、低コストと間口の広さを売りに拡大してきました。

しかし成長し続けてきたとはいえ、運用資産残高から算出される収益規模は700万ドル程度。これをどう見るかですが、問題は新興プレイヤーとして独自に顧客を獲得するコスト。これはかなり重いようで、記事ではそれを、年間4,000万ドルから5,000万ドルと推測する有識者を引用しています。つまり、まだまだ単独で事業として成り立つ状況ではなく、損益分岐点を超えるにはまだまだ運用資産を伸ばしていかなければならない宿命です。

気になるのは拡大のスピード。2014年では両社とも運用資産残高の成長率は毎月10%程度あったようですが、最近は5%程度に落ちてきているとのこと。なかなか前途は多難のようです。

さらにここへきて、既存事業者からの反撃にもあっています。資産運用大手のバンガード社やチャールズ・シュワブ社もロボアドバイザーサービスを開始。巨大な顧客基盤を持つだけあって、例えばチャールズ・シュワブ社のサービスは既に運用資産残高41億ドルとのこと。自社サービス同士が顧客を取り合うカニバリゼーションを起こしているとも見られますが、それでも顧客基盤とブランドを持つ既存事業者の強みを見せつけています。

8月には資産運用のBlackRock社がロボアドバイザーのFutureAdvisor社を買収したとのニュースもありました。米国のロボアドバイザー専業会社の行く末がどうなるにせよ、ロボアドバイザーの登場で資産運用の間口が広がり、その利益が多くの顧客によって享受される時代に米国は既に突入している、と言えそうです。

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