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FinovateFall2015を振り返る(2)

Scanrail/Bigstock.com

前回インサイト「FinovateFall2015を振り返る(1)」に引き続き、本稿でもFinovateFall2015で紹介されたFinTechサービスを詳しく見ていきます。

事業者向けサービス

FinovateFall2015-5 事業者向けサービス

FinovateFall2015-5 事業者向けサービス

事業者向けサービスの領域では、登壇起業数は比較的少ないものの、従来の金融機関によるサポートが比較的薄かったSME(中小事業者)向けサービスばかりが登壇。従来のチャネルではコストがかかり過ぎるなどの理由でリーチしにくかったSMEに対してリーチできるようになるという、FinTechならではの「金融サービス顧客層の拡大」の効果を体現しする領域と言えるでしょう。

日本においてもSME向けサービス拡大は金融業界全体の関心事。また経済産業省も、SMEによる資金調達のFinTechによる変革の可能性の観点などから、FinTechによるインパクトに注目しています。それは「産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」での議論事項にも挙がっています。

この領域で、筆者が特に注目したのは以下の2社です:

  1. Lift Forward 物販のリース化
    マイクロソフト社と提携し、これはSurface端末のリースなどTechnology-as-a-Service事業における与信・回収などの金融業務全般を担っており、リスクも全て同社が負っているとのこと。SME向け与信モデルが強みとのことでした。
  2. Bizfi SME向けマーケットプレイス型レンディング
    SMEと貸し手を結びつけるマーケットプレイス。かつてはPtoP融資と呼ばれていた分野ですが、金融機関などが貸し手として参加するようになった今では[PtoP」という語が適切でないため、「マーケットプレイス融資」などと呼ばれています。Bizfiは2015年春に日本のクレディセオンと提携しています。日本の金融業界にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

 

金融サービス事業者向けサービス

FinovateFall2015-6 金融サービス事業者向けサービス

FinovateFall2015-6 金融サービス事業者向けサービス

最後に紹介するのは、金融サービス事業者向けのサービスの領域。この領域の存在自体が、FinTechと金融機関の共生関係を印象付けるものです。日本はようやく「金融機関 vs FinTech」といった単純なモノの見方から卒業できそうな雰囲気ですが、Finovateでは「顧客基盤とチャネルを持った金融機関を通して、FinTechサービスをユーザに届ける」という見方は当然。この領域の登壇企業数の多さからも、欧米FinTechの成熟度が垣間見えます。

金融サービス事業者のバックンド業務が対象であるこれらのFinTech。特に、金融サービスと切っても切れないリスク分析に対するFinTechは日本の事業者にも特に関心のある分野ではないでしょうか。また、マネロン対策としてのKYC(Know Your Customer:本人確認)に関しても、その円滑化・効率化は日本に限らず海外でも関心事。KYCは法制度によって定義されているため、制度が異なる日本と海外では同じサービスを持ち込むことはできませんが、日本のKYCをどのように高度化していくか、という観点からは大変参考になると思います。

この領域で特に筆者の目を引いたのは以下です:

  1. Big Data Scoring 個人信用リスク分析
    ビッグデータを活用した個人信用スコアリングモデルです。従来手法に比べてスコアリング精度が「25%向上する」とのことです。ユーザーの同意の基でFacebookプロフィールにしたり、居住地の様子をストリートビューで確認したうえ、最寄りのバス停・大学など各種施設の状況も与信判断に加味するとのこと。他にも、使用しているモバイルデバイスやそのOS、メールアドレスのドメインなど、個人に関して得られる一見すると「無駄」な情報を与信判断に活用。ビッグデータ時代にふさわしい個人与信審査手法になっていくのでしょうか。

なお、従来は考慮されなかった様々な情報を与信判断に活用するとの考え方は既にあり、例えば欧米のEC向け後払い決済で有名なクラーナ(Klarna)も、購入処理をした時間帯やそのデバイス、名前を入力する際の大文字・小文字の使い分け方の特徴なども与信に活用しています。

EC向け後払い決済のKlarnaに関するインサイト記事:

おわりに

FinovateFall2015n振り返り、いかがでしたでしょうか。今回は2回に渡って、インフキュリオン独自取材に基づく分析をお送りしました。

聴衆の投票による「Best of Show」受賞8社の概要など、既にインサイト記事としてご紹介しているものもあります。下のリンクの記事もチェックすると、FinovateFall2015の全貌がよりわかりやすいと思います。