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資金決済サービス高度化② 金融EDI

digitalista/Bigstock.com

前回に引き続き、第2回として2014年11月5日に公表された日本銀行「(日銀レビュー)主要国における資金決済サービス高度化に向けた取組み」より、金融EDIを紹介します。

出典

金融EDI(Electronic Data Interchange)とは、受発注等の物流に関する商流情報と、取引先企業の銀行口座に、いくら払い込むかといった決済情報を連動させ、企業間で決済する際の取引関連データを電子的に交換するための仕組みのことです。商品の発注から資金の決済までの一連の過程をすべて電子的に行い、商流情報と決済情報を連動させることによって、従来、手作業で行っていた売掛金の消し込みを、自動処理で行うことができます。

先進的に金融EDIに取り組んでいる欧州では、2002年以降、EU加盟国を中心にSEPA(単一ユーロ決済圏)の実現に向けた取組みが進められてきました。SEPAは、ISO20022 に準拠した XML 電文を銀行間の統一フォーマットとし、ユーロ圏内外のユーロ建て決済をより効率的かつ簡便に実現することを目指したプロジェクトです。口座振替、自動引落、カードビジネスを含めた決済サービス全般の共通化、統一化を目指したものであり、金融 EDI 以外も対象としています。

金融界・産業界を含む関係機関により、単一通貨のメリットを最大限発揮させるために取り組まれましたが、欧州各国政府から関係機関の自主的な取組みを促しただけでは統一フォーマットの普及が進まなかったため、法整備を通じた XML 電文の義務化が図られました。

SEPAの下で、顧客が銀行口座の一元化を図ることが可能となり、口座振替、自動引落、カードビジネスの面で高度な決済サービスを享受できるようになるほか、金融 EDI の実現に向けたインフラ整備が進むことが期待されます。実際、決済に関わる業務の一貫処理が可能となったほか、取引先との決済において自動引落を活用するなどして、SEPA への対応に要したコストを 1 年で回収した事例が EPC Newsletter, Issue 14-April 2012 において紹介されています。

また、米国でも、ACH(Automated Clearing House;小切手に代わる電子的決済)において、国際標準とは異なる独自の電文フォーマットを使って、商取引情報を添付することが可能な枠組みの整備が進んでいます。

欧米の金融インフラ整備が進み、欧州域内企業の決済サービスにかかるコストが大幅に削減されると、企業の国際競争力の点から、日本企業にとってもこうしたコストの削減が課題になると思われます。
2014年6月24日に公表された政府の『「日本再興戦略」改訂 2014 -未来への挑戦- 』においては、即時振込と商流情報(EDI)の添付拡張が求められています。また、一般社団法人全国銀行協会・一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークからも2014年10月16日に『全銀システムのあり方に関する検討状況(中間報告)』にて、全銀システム稼働時間拡大の検討と、金融EDIのニーズ調査を行うとしています。

このように、日本でも政府・業界団体がインフラ整備を促していますが、決済業界においても銀行のサービス高度化を後押しする変化が起きています。近年、決済代行業が台頭し、商流情報・決済情報の照合と相殺を行うようになっています。顧客との間に決済代行が入ると、銀行は最終的な金額データしか手に入らず、商流情報を手に入れることができなくなります。取引相手や、何をどれだけ買ったのか、といったキャッシュフローの中身が分からなければ、銀行の融資活動にも支障が出ます。

日銀のレポートは、「決済サービスの高度化に向けた取組みを、政府と連携しつつ支援していく方針である」と締めくくっています。銀行には政府・日銀の決済サービス高度化政策をうまく利用し、インフラ整備を進めていくことが期待されます。