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API連携によるスマホ完結型リアルタイム住宅ローン

viperagp/Bigstock.com

FinTechによる日本の金融業界の活性化における重要論点の一つが、APIによる異業種連携。APIとは、Application Programming Interfaceのことで、自社のITシステムのデータや機能への外、部からのリアルタイムでアクセスを可能にする手法。APIという「受け口」を通した金融や異業種の連携は、FinTechの一大テーマの一つです。

日本では金融業界におけるAPI連携の議論が始まった状況ですが、米国FinTechシーンではAPI連携によるサービスがいくつも登場しています。今回は、米国シリコンバレーで5月に開催されたFinovateSpring 2016の登壇企業のサービスを紹介し、「API連携時代の金融サービスの将来像」について考察したいと思います。

モバイルファーストで住宅ローンを考える

今回紹介するのは米国のFinTechスタートアップのRoostify。FinovateSpring 2016では、スマホで完結する住宅ローンの申込とリアルタイム審査のデモを行いました。

関連情報:

モバイルファーストとは、スマートフォンなどのモバイル端末ユーザを第一に考えてサービスを設計する姿勢。スマホは特に若年層において普及が著しいことを考えると、金融サービス利用の裾野の拡大を目指すFinTechにおいて特に重要になります。

しかし、金融サービス利用においては、様々な個人情報や資産情報の入力やその突合がつきもの。それをスマホのタッチパネルで入力するというのは、それだけで高いハードルになってしまいます。

Roostifyは、住宅ローンの申込という、伝統的に様々なデータや書類が必要な業務を、リアルタイムでスマホ完結させるという大変興味深いデモを行いました。ポイントは、API連携によって、ユーザによるデータ入力を省略しつつ、ユーザ入力よりも確度の高いデータを使って住宅ローン審査を行うという点です。

この場合のAPI連携先は、確定申告アプリ。源泉徴収が広く行われている日本と違い、米国では個人個人が毎年自分で確定申告を行います。税法の細かな変更に合わせて計算方法も毎年のように変わるため、確定申告アプリを使うことが一般的になっています。(昔はPCにインストールして利用する形態でしたが、クラウドサービスとして利用する形態が広く普及しています。)

Roostifyを使って住宅ローン申込を行う際に最初に求められるのは、ユーザが利用している確定申告アプリへのアクセス。IDとパスワードを入れると、Roostifyが確定申告アプリにアクセスして必要な情報を取得します。そうすることで、個人情報や収入情報など、確定申告に利用している確度の高い情報を、住宅ローン申込書に反映するのです。

確定申告データにはほかにも、給与所得や勤務先も含まれますし、過去データも合わせると職歴データも生成することができます。Roostifyはこのように、確定申告アプリが保有しているデータから、住宅ローン申込に必要なデータのほとんどを取得することで、ユーザによる入力を省略しているのです。

あとはユーザが利用しているインターネットバンキングにアクセスして資産状況や頭金資金の確認を行い、ユーザの状況に合わせた最適な融資商品を提案。ユーザの選択が選択した融資商品について与信審査をリアルタイムで行う、というデモでした。

日本ではマイナポータルが鍵になる

「それは確かに面白いけれど、日本ではそんな確度の高い個人情報や納税情報にアクセスできるAPIなんか無いから関係ない」、そんな風に思われた読者もいるかもしれません。

現状ではそのとおりですが、日本でも個人に関する様々なを集約するポータルの整備が国策として進められています。それは個人番号(マイナンバー)制度の一環として構築が進められている「マイナポータル」。2017年中に稼働する予定です。

詳細は下記の参考情報で確認できますが、マイナポータルが稼働し民間に開放されると、例えばユーザの同意に基づいてマイナポータル経由で納税情報や勤労状況を確認し、ペーパーレスで住宅ローン申込を行う、といったこともできるようになると思われます。これはまさに、API連携によるスマホ完結型住宅ローンプロセスと言えるでしょう。

マイナポータルに関する参考情報:

今回は、「API連携によってどのような金融サービスが可能になるのか」というテーマで、Roostifyのデモを紹介し、日本でのマイナポータル活用の可能性について考察しました。インフキュリオン・インサイトでは引き続き、日本の金融サービスの将来像を考えていきたいと思います。