ECでの後払い決済は日本においても拡大中ですが、海外では、スウェーデンの後払い決済サービスのクラーナ社が欧州中心に拡大を続けてきました。そのクラーナ社が2015年に米国進出すると発表しましたので、今回はクラーナ社のサービスと事業の概要をご紹介します。
クラーナ社は2005年にスウェーデンで創業したEC向け後払い決済サービス会社で、同国での銀行免許も持っています。北欧を中心に事業を拡大し、欧州の大市場である英国やドイツにも進出済です。2015年に米国に進出すると発表したことで、米国のECユーザーにとっても決済手段がさらに増えることになります。
クラーナ社は事業目的として、加盟店向けには「転換率の向上と、後払いに関する全リスクの引き受け」、ユーザー(消費者)に対しては「オンラインショッピングのシンプル化」という価値を提供することを掲げています。
同社の後払いサービスの利用方法は以下のようになります。商品購入時、ユーザーはEメールアドレスや郵便番号(ZIPコード)などを入力します(※)。サービス利用者IDなどは不要です。入力を受け付けるとクラーナ社がリアルタイムで与信審査を行い、OKであれば加盟店に即時入金します。これで商品の購入は完了し、購入者は買ったものを受け取ることができます。購入者は14日以内にクラーナ社に利用金額を支払えばよいですが、さらに分割返済など支払方法も複数手段が用意されています。
※具体的な入力項目は国によって異なります。
後払いサービス提供にあたってはユーザーへの与信が重要ですが、同社は個別の購買行動を把握して与信する点を特徴として挙げています。例えば具体的な購入商品や、購入の時間帯、購入に使用しているPCの情報などです。その結果、例えば特定時間対に書籍を購入している場合はリスクが低いのでOKするが、別の時間帯にiPadを複数台まとめ買いしている場合はリスクが高いので追加の情報提供を要求する、などの対応を取ることができ、それによって貸し倒れ率を1%未満に抑えています。
収益源は加盟店からの手数料が主ですが、ユーザーに対しても分割返済などの金融サービスを提供しており、そちらも収益源となっています。
同社によるとユーザー数は2,500万、加盟店数は4万5,000、一日あたりのトランザクション件数は20万件で、北欧のEC売上シェア10%、2014年の売上は3億USドルを見込んでいます。
米国ほどクレジットカード利用が広く浸透していない欧州で拡大してきたため、クレジットカードに依存しない決済手段を提供できる点、そして消費者からの回収も欧州各国の事情に合わせて多様な回収手段に対応してきた点が強みです。例えば米国EC業者が欧州に進出する際にもクラーナ社と組むメリットはありそうです。
PayPalの牙城である米国EC市場に切り込む欧州発のクラーナ社。日本における後払い決済の興隆と併せて、今後も動向を注視していきます。
参考情報
- Klarna社Webサイト(https://klarna.com/)
- Forbes誌記事「European Mobile Payments Firm Klarna Targets The U.S.」
- Washington Post記事「Sweden’s Klarna to Enter U.S. Online Payment Market」
- paymentweek記事「Klarna Brings in Brian Billingsley to March on United States Mobile Markets」