Infcurion Insight

決済業界・Fintechの最先端情報を届けるニュースメディア

米国モバイル決済市場の主要プレイヤーとトークナイゼーション

米国モバイル決済の主要プレイヤー

2014年にサービスを開始し注目を集めたApple Pay。iPhone端末を非接触EMV対応の店舗端末(いわゆるNFC対応端末)にかざすことで、登録していたペイメントカードで決済できるアプリです。カード業界の団体であるEMVCoのトークナイゼーションを用いた初のサービスでもあり、カードインフラを活用したこれからのモバイル決済の方向性を指し示す事例ともなっています。

モバイル決済にはSamsung、Google、MCXもサービスを投入していく予定で、米国モバイル決済市場はさらなる盛り上がりを見せていきます。これらのサービスの日本上陸時期はまだ未公表ですが、水面下では様々な動きがある模様。日本のモバイル決済の将来を考えるうえでも、米国動向からは目が離せません。本稿では、これら米国モバイル決済の主要プレイヤーの動向を紹介します。

まずはApple Pay。22万箇所でスタートした利用可能場所は、約半年後の2015年3月には70万箇所に増大したとのこと。2015年10月のライアビリティシフトに向けたEMV対応の流れにのって、米国での非接触EMVの普及のスピードも上がっているようです。国際ブランド経由での米国の非接触決済の3分の2がApple Pay経由との発表もあり、モバイル決済の普及の旗印ともなっている感があります。

カード番号ではなくトークンを用いる決済に指紋認証を組み合わせて高いセキュリティを実現したApple Pay。しかし前者のトークン化は、米国外でのサービス開始の前提となることもあり、日本においてもどのようにしてトークンサービスを実現するかがカード業界関係者のホットな話題となっています。(トークン化に関しては本ブログの関連記事へのリンクを下で示しますので参照ください。)

モバイル決済ではAppleに先を越されたかたちのSamsungですが、3月初旬にSamsung Payを発表し、Apple追撃の具体策を示しました。トークン化、指紋認証、非接触EMV対応という点ではApple Payと同等ですが、大きな差別化要素はMST(Magnetic Secure Transmission、磁気セキュア伝送)。これはなんと非接触EMVに対応していない従来型の磁気端末においても非接触決済をやってしまうという驚きの技術。MSTを開発したベンチャー企業LoopPayを傘下に収めたSamsungは、サービス開始時点からほぼすべての加盟店で利用可能というSamsung Payで、ユーザーを一気に獲得していく腹積もりと見えます。

2011年にGoogle Walletを投入したもののその普及に成功したとは言い難いGoogle。2015年5月に戦略転換を発表しました。Google WalletはPtoP送金サービスとして位置付けられ、モバイル決済としては2015年3月に発表したAndroid Payに注力します。Android Payの具体像は未公表ですが、Apple Pay・Samsung Payと同様に、非接触EMV・指紋認証・トークン化という要素を備えています。独自の決済を追求しようとしたためにカード業界の協力を得られなかったGoogle Walletでしたが、その反省を踏まえてか、Android Payではカード業界が提供するインフラを活用する方向に転換したようです。

クレジットカードとデビットカードが広く普及している米国。しかし加盟店からすると、現金取引が減ってカード取引が増えるほど、カード会社に支払う加盟店手数料がかさみます。米国小売業界は、訴訟という手段に訴えても決済コストを減らすべく動いてきましたが、大手小売を中核とする団体MCXはさらに、カード業界のインフラによらない独自のモバイル決済サービス投入を予定しています。QRコードをベースとするこのサービスは「CurrentC」と呼ばれ、2015年中に開始の予定。ACHによる口座即時引き落としで、決済コストは0.2%程度と言われています。

MCX以外のApple、Samsung、Googleはどれも世界展開する巨大企業で、日本市場でも大きな存在感を持つプレイヤーです。これら3社のモバイル決済は日本の決済市場にも大きなインパクトを持ちますが、日本上陸のキーになるのがトークナイゼーションの実現です。

米国モバイル決済サービスの動向からは、将来の決済サービスを考える上でのトークナイゼーションの重要性が見えてきます。舶来もののサービスを「輸入」するため、という観点だけではなく、日本における決済のあり方において、トークナイゼーションは今後の重要キーワードとなっています。