1月27日、米国で複数のカード情報を1枚にまとめて持ち歩けるクレジットカード型の端末「SWYP」(Qvivr社)が発表されました。SWYPは、複数のカード情報を一元的に管理する電子機器です。何枚ものカードを持ち歩こうとして、財布が膨らんでしまう不便を解消することがコンセプトです(この記事では便宜上、このようなカード型端末を「スマートカード」と呼びます)。
同種のカードは、2013年11月にサンフランシスコのベンチャー企業Coinが発表した「Coin」、2014年10月にPlastc社の「Plastc」と2種類あります。草分けのCoinは一度、開始時期が延期されましたが、2015年春の提供を予定しており、その後夏にPlastc、秋にSWYPと、今年はスマートカード元年となる様相です。
そのCoin提供に先駆けて、スマートカードの現状と機能の違いを整理してみました。
まず、3枚のカードを比較してみます。
Coin(コイン) | Plastc(プラスチック) | SWYP(スワイプ) | |
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発表 | 2013年11月 | 2014年10月 | 2015年1月 |
提供開始予定 | 2015年 春 | 2015年 夏 | 2015年 秋 |
保存可能枚数 | 8枚 | 20枚 | 25枚 |
通信手段 | 磁気ストライプ | ・バーコード ・磁気ストライプ ・チップ&PIN ・非接触IC |
磁気ストライプ |
セキュリティ | ・置き忘れてしまった時など、所有者とカードが離れるとiPhone等のスマートフォンがアラートを出す ・スマートフォンから離れて10分経つと、自動ロックがかかる |
・Plastc自体にPIN番号を設定し、使用時以外はロックがかかる ・置き忘れてしまった時など、所有者とカードが離れるとiPhone等のスマートフォンがアラートを出す ・紛失時はスマートフォンから無効化することが可能 |
・ペアリングしたスマートフォンから電波(Bluetoothと思われる)が届かない距離まで離れると自動でロックが掛かるよう設定可能 ・ロックされた状態でもPINコードを入れると使えるようになるので、スマートフォンをどこかに置いてきても、SWYP単体で決済できる ・SWYPとスマートフォンを同時に紛失した場合、スマートフォンをリモートワイプすると、SWYPは完全に利用できなくなる ・カードの情報はSWYP内部で暗号化される ・登録するカードとSWYPの登録名義の照合を行うので、他人のSWYPに自分のクレジットカードを勝手に登録されることがない |
登録可能な カード |
・クレジットカード ・デビットカード ・ギフトカード ・メンバーカード |
・クレジットカード ・デビットカード ・ギフトカード ・ポイントカード ・アクセスカード(社員証など) ※登録可能なブランドはVisa、MasterCard、AMERICANEXPRESS |
磁気ストライプを利用するタイプの全てのカード |
価格 | 100ドル(事前予約50ドル) | 155ドル(プレオーダー価格) | 99ドル(事前予約49ドル) |
保存可能なカード枚数は、Coinの8枚からPlastcの20枚、SWYPの25枚と、後の製品ほど容量が増えています。またSWYPは、他人名義のカード登録防止機能やBluetoothによる置き忘れ時の自動ロック等、セキュリティ面でも他の2枚より機能が拡充しています。Coinは、発表から提供まで2年かかっているうちに、アップグレードされた競合製品の登場を許してしまいましたが、SWYPは開発に1年半かかったものの発表から提供までが半年程度なので、実際の提供前に他社がアイデアを真似するリスクが低いと思われます。
他方、通信手段についてはPlastcが最も充実しており、あとの2枚はNFCもEMVも対応していません。また登録可能なカードも、社員証まで一元管理できる点はユニークです。その分、料金を見るとPlastcは事前予約価格で155ドルと、CoinまたはSWYPを事前予約で3枚買ってもおつりがくる価格です。ただ、他の2枚と違ってバッテリーを充電できるので、長く広く使いたい場合はPlastcが便利だと思われます。
Coinには先日、クレディセゾンが出資することが報道されました。いずれのスマートカードも日本での提供予定は不明なものの、商品ローンチ前から高い注目と話題を集めています。
まずは今春、Coinに対する米国消費者の反応に着目しましょう。