2016年は、ついにApple PayとAndroid Payが日本でも相次いで開始された年でした。
本家の米国において非接触型のモバイル決済への関心を高めることに大いに貢献したこれらのサービスですが、日本においては少し位置づけが異なります。
もともとFeliCaよる非接触電子マネーの利用が盛んな日本。海外のApple PayやAndroid Payが使用している非接触EMV(いわゆる「NFC」)の普及はあまり進んでいません。むしろ、日本でのFeliCaインフラの普及度合いを考慮して、Apple PayもAndroid Payも、FeliCa対応の道を選んだのです。
こうなると日本における非接触EMVの普及の道筋は依然として不透明な感がありますが、海外では非接触EMVの普及拡大がトレンド。今回は特に、世界の非接触EMV拡大を牽引している欧州の状況を、主にVisa Europeが公表しているデータを基に紹介します。
参考情報:
- AppleのApple Payのサイト:http://www.apple.com/jp/apple-pay/
- 楽天EdyのAndroid Payのサイト:https://edy.rakuten.co.jp/howto/android/pay/?l-id=lid_csv_new_2016_1213_android_pay
非接触EMVの拡大を牽引する欧州
今回参考にするのは以下のニュースです。
- 「Europeans “touched to pay” three billion times in the last 12 months」、Visa Europe、2016年5月11日
Visa Europeによると、欧州はまさに非接触EMVの急速な普及の真っ只中です。2016年4月末までの12ヶ月間で非接触取引が30億件を突破したとのこと。これは前年の同期間の3倍ということで、まさに爆発的な拡大です。
月間取引件数も、2016年4月は3億6000万件と、前年同月の2.5倍。なお、欧州において特に非接触決済の利用が多いのは英国、スペイン、ポーランドとのことです。
ちなみに日本銀行のデータによると、2016年4月の日本のIC型電子マネーの決済件数は4億1600万件。欧州で非接触決済が伸びているとはいえ、まだ日本の非接触電子マネーの利用のほうが多いです。が、これもいつ追い抜かされるか、という感じですね。(出所:日本銀行の「決済動向」)
Visa Europeによると欧州での対面決済の5件に1件が非接触取引。2013年にはまだ60件に1件だったものがかなり増えています。非接触対応店舗の急速な増加がその背景にあり、2016年5月時点で非接触対応端末設置台数は320万台。また、新規設置端末のほとんどが非接触対応しており、今後もこの数は伸びていくとしています。
PYMT.comは、BRB社のリサーチを引用しつつ、欧州における非接触EMVの普及要因として、「各国政府のキャッシュレス化政策」と「VisaとMasterCardの取り組み」を挙げています。政府のキャッシュレス化推進においては、非接触決済の利便性は、消費者を現金から電子決済に誘導する上での「アメ」となります。また、VisaとMasterCardは、2020年までに欧州の全決済端末の非接触対応を目標としています。
Apple PayとAndroid Payの開始で、新たな時代に入った日本の決済業界。しかし非接触EMV普及が進む諸外国とは異なる道を進んでいくのでしょうか。
参考情報:
- 「決済動向」、日本銀行
- 「Contactless Card Usage In Europe Exploding」、PYMTS、2016年11月10日